2011-2022
うちのフレンチブルドッグは
目が見えなくて
でも犬は鼻があればなんとかなるみたいで
それに耳も大きいし
私は私でいつまで経っても
子どもが出来ないし
なんなら癌にも罹ってたし
色々諦めれば生き延びられるみたいで
そうしたら6階建ての実家のマンションがものすごい勢いで揺れて
私に”孫よりも私の命”って言ってた母親が、動けなくなってたから
とにかく”情報源の確保だ”って言ってテレビを押さえてもらって
私はパソコンを必死に押さえてた
目の見えないフレンチブルドッグは
あんまり状況が呑み込めていなかったようで
そんなに大騒ぎしていなかったけど
ケガもしていなくて良かったと思った
ベランダから外を見まわしたけど
そんなに世の中は変わっていなかった
テレビの中も最初は普段通りだった
自宅に帰ったら津波が来てた
フレンチブルドッグは寿命で死んでしまった
母は私と同じ癌で死んでしまった
私は生きて子どもが生まれて
癌も取った
津波の跡はまだ残っている
しぶとくしぶとく生き続けている
それでいいんだ
しぶとく生き続けたい人たちよ
どうか負けないで欲しい
たった一人の狂った男の戯言で
どちらの国の人たちも
生きていけないなんておかしいだろう
1996年に満州の芝居を演った
「ロシア兵がやってきたのです」
そんな言葉が2022年に聞かれるなんて思わなかった
津波のように止められないわけじゃない
止めてくれ
やめてくれ
コメント
災害や戦争が人類の歴史なのでしょう。
ならば人類の歴史なんてどうでもいい。
個々の、それこそそれぞれの人の人生、それだけが大切なことだとこの詩を読んで思います。
個人としての、生活、人生を見つめることの大切さを想いました。その想いが、世間、ひいては社会へと繋がっていくのでしょう。
日常的に迫ってくる恐怖から、強大な恐怖への流れに心震えました。
一人一人の心の問題なのだと気づかされます。
チャリティー・コンサートがお金を生み出して、支援金となるように
個人の「負けない」という強い意思が、やがて大きな何かを止めてくれるかもしれません。
なんだかんだ有りつつも、俺もまだ生きてます。
今更だけど、SEIだよーん。