夜明けの座標

夜明けの座標
 
 
天蓋から手を引かれるとき
力場の弱さから腰を上げ
反動で駆け出す
流星群の生まれる座標を示してくれるだろうか

孵ったひかりたち
境界をぼかしたわたしたち
腕の中にあたためられる棲家
南の果物との戯れの色を知る
唯一のつがい
強くて弱いいきものとして
なんでもないように

頬を包む距離から浸潤の距離まで
絹の雲に沈む金属の流動体として
空想科学を真似ては混ぜて
絶え間なくモアレになれるのなら
そのフローの泉にダイブする意志を
認める為の船を得る

夜明けの國のそれぞれの夜明けがやまないよう黒髪を捧げ数を廻し続ける気のふれた情緒

夜明けに焦がれる
あの人もそうだったか
夜明けを見届ける
あなたにもあるのか
 
 
————————————
 
夜明けの座標
 
 
パートナーがいても
モーションをかけられることはある
手に入れられると
次第に存在の輪郭を求められなくなる
重さを失いはじめたら
モーションが届くよう隙間を開けて
待っているのかもしれない

親として子どもに強く求められること
つがいとして強く求められること
旅立ちの抑止力になっている
他に関心が向かないだけの状態ともいえるが
色恋のみの例えではない
相手がいる者同士の夜を初めて
打ち明け打ち明けられたパートナー
強いまま弱いままをただそこに在るものとして
受け入れてきた

頬を包む距離から互いの隙間に入り合う距離へ
例えばやわらかいお布団で
水の銀のように近寄れば融合する
あなたの好きなSFに似ている
粒子の集合体同士が重なり合いモアレをつくり
絶え間なく動き続ける
心理とからだの分別などはない
からだが欲しいならいかようにも
フロー状態になれるなら

夜明けの國のそれぞれの夜明けがやまないよう黒髪を捧げダイスやルーレットを廻し続ける気のふれた情緒

事象のほとんどに夜明けがあればいいのに
あの子が道道のかけらを拾うことにだって
すれ違いデータを譲り合うことにだって
春に芽吹き日照りに朽ちた菜園にも
あの人にもあなたにも同様の焦がれがあるのか
覗いてみたい
 
 
—⭐︎——⭐︎——⭐︎——⭐︎
 
実験的に上下往復しながら同時に書いた二篇。上下の詩は連ごとに対応していて、上の詩は“翻訳、変換、ヴィジョンの描写”みたいな書き方、下の詩は“赤裸々、口語的、説明的”のつもり。

あの子やあの人やあなたは、あなたがあなただと想像するなら、あなたなんじゃないかな。

投稿者

東京都

コメント

  1. いよいよ来週!
    10月のお題企画のお知らせです。
    投稿期間は10/16(金)〜19(月)
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    『ロック’ン’ロールの死』

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    次のお題考案者の決め方、今後の情報などは公認掲示板をご確認ください⭐︎

    https://rara.jp/poekai_2021/

  2. 最後まで読んで、なるほどと思って読みなおしました。
    こういう描き方もあるんですね。
    どちらが好きかとか良いかとかではないと思いますが、後段のしっとりした語り口が寄り添われているようで気持ち良かったです。

  3. 私も最後まで読んで、次に交互に読み返しました。向き合った人が、交互に語り、互いの共通を確かめているような、そんな光景が浮かびました。

  4. 非常に知的でかっこいいですね。四連目の長い一文がアクセントになって全体が締まりますね。

  5. これがこうなるのかと興味深くて何回も読み比べていました。隙間も開けるし、開いてると入っていきたくなる。

  6. @汀尋(ていじん)
    さん
    ふと思い付いて書いてみました。
    読者に気持ち良いと感じて頂けた(嬉しい)のは意外で、書き手も「そういう読み方があるんな」という気づきを得ました。
    ありがとうございます。

  7. @野鳥倶楽部
    さん
    向き合った人が交互に、とは興味深い読みです。(うれしい)
    もしそうならポジティブな多重、解離性だなあと思いました。
    ありがとうございます。

  8. @たかぼ
    さん
    物足りなくて最後に入れた一文が届いて、浮かれてしまいます。
    知的は“言われて嬉しいこと5選”に入ります。しかもDr.に。
    ありがとうございます。

  9. @花巻まりか
    さん
    これがこうなるんですよね。
    書きながら、なんで二つ書いてるんだっけと自分でわけわかんなくなる瞬間がありました。
    私は開いてるととりあえず覗き込んだり、何か投げ入れてみたりして様子を伺います。

  10. この詩から、あたたかい光を感じます。
    というのも、

    孵ったひかりたち

    という一行が、私にとって、強烈に好きだからかもしれません。
    素的。

  11. いろんなところで感動してしまって何度も読まなきゃと思ってるうちに出遅れました。実験的で立体的で構造的で、いくつの的を言えばこの詩を言い表せるのか、いや何々的なんてことで絡めとることなどできないのではないか。幻想的な詩と対をなす具体的な内省言語の詩が、ものすごく多種多様な関係性の中で受容したり祈ったり狂気になったり、・、水銀やモアレなどが象徴的。本当に本当に事象のほとんどに夜明けがあればいいのに、ですね。なんだろう、コメント長くなって気持ち悪いけど、ありがとうって言いたくなりました。

  12. 夜明けの座標 とはいいですね。その座標はその時その人の在り様でいくらでも違う場所に。だけどその座標軸を縛るものもあって、またその座標が重なったり重ならなかったり。
    まぁ夜は不埒なので明ける頃の座標はとんでもないところだったりするのが日常です。

  13. @こしごえ
    さん
    そうなんです。
    ひかりたちはたくさんある宝物の一部を打ち明けたようなところで、あたたかく感じてくださってありがとうございます。

  14. @あぶくも
    さん
    “幻想的な詩” “具体的な内省言語の詩”
    そう言い表せばよかったのか!と感嘆しております。
    最近の自分の詩は読み手を選ぶかもと考えていてたのと、若い女子に絡む粘着物をこちらに誘い込めないかなーという悪戯心でこの形式で書くことを思いつきました。(全然誘い込めなかった)
    下の詩の最終連の事象のほとんどは、羅列すればきりがなく、あなたやあの人のそれのほとんどにも夜明けがあればいいと常に切に願っています。レイヤーとして常にあるのでモアレ。
    利他に近いのですが同時に私利もあるような。
    兎にも角にもとっても嬉しいコメントでした!

  15. @王殺し
    さん
    縛りがあるからこそ自由が存在するってぼんやり思います。(いつもぼんやりしています。)無数の概念によりそれ以上の座標軸があり、それが変化し続けるのが面白いんですよねー。
    明ける頃の座標がとんでもないところって、すごく惹かれます。気になる。何?何処?

  16. わたしも、たちまこさんの詩を読んできゅきゅーっとなること多々です(もう恋です)
    タイトルがまず好き
    わたしには思いつかない!書き方も!言葉選びも
    ここに来るとたくさんの知らない言葉や言い回しがあって、いつも感心させられます
    たちまこさんの頭の中を見てみたい

  17. @イチカワナツコ
    さん
    自分は他者にものすごく興味があって、中まで入ってみたくなるんです。相手からしたら嫌だったろうなぁって後悔することが多々ありました。
    そんな中まっすぐ好きって言われたら間違いなく惚れてしまいますよね。

  18. @たちばなまこと
    わ、わかりみが…
    わたしもです
    しかも、スキップとかでいくんです、わたし

    でも相手によってはそれを、土足で的に思われることもある
    あー会いたいなぁ

  19. @イチカワナツコ
    さん
    お、わかりみ、ありがとうございます。
    スキップかわいいなあ。
    うちは子どもたちが大きくなったので、ぽえの関西会とか夢想してます。
    あとはお仕事頑張って遊ぶ金を作る、みたいな。

  20. @たちばなまこと
    さん
    「絹の〜」第4連同士の表現と対比、凄いですね。溶け合って形を変えても個性は残ると感じました。溶岩が冷えて固まるように、形を変えた先にも、それぞれ固有の姿が現れる。そんなイメージが浮かびました。

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