プラナリアリンネ

プラナリアリンネ

「異なるiが重なったとき、それらは互いに打ち消し合い、弾けるように無へと還る……」
「ポエム? ……一人称のIと虚数単位のiをかけているの? ……私にはよく分からないユーモアね」

◇◇◇

例えばカミソリかチェーンソー
メスとか刀剣とかで
その胴体を真っ二つにしてみたらどうだろうか

そうだな、痛みは特にない
何かを失った感覚も特にない
代わり映えのしない日常
無意識の内に日陰をそっと歩いた

◇◇

「どこで拾ってきたの? ……ふーん、そこら辺の川? まだ綺麗な水源が残っていたのね……」
「ああ。ただ、すぐに汚染されてしまうだろう……。連れて帰れたのはこの数匹だけだ」
「最近の開発速度はなかなかのものだしね。私たちもその恩恵を受けてる」

◇◇

脳裏に巣食うお前は誰だ
俺の記憶にないはずのその輪郭は
風に髪が流れた
水煙に目を細めた
振り払っても消えやしないその呪い
殴り書いてかき消すほどの衝撃を求めている

◇

例えば前世と今世と来世と
天国と地獄やらが
存在していたとして
心臓の奥で魂は眠っているだろうか

鮮血は温かく
それでいて指先は凍えていて
ぼんやりとした脳髄に電気信号が駆ける

脳裏に巣食うお前は誰だ
俺の記憶にないはずのその微笑は
たとえ前世があったとして
もしも来世があったとして
俺は俺のままいられるだろうか
どうだろうな

◇

数千年の祈りと
数万年の眠りと
数億年の旅路が
何を証すだろう

◇

脳裏に巣食うお前は誰だ
俺の記憶じゃないその涙は
ガラス越しに手を合わせた
覚えてもいないその思い出
一千回の夜を過ごして
一億回斬り裂かれたとしても
その一片を握っている、離せないでいる

脳裏に巣食うお前は誰だ
俺の記憶にないはずのその眼差しは
何だか無性に哀しい

熱が指先から伝わっていく
感覚が溶けていく
(言葉にならないスラング)

視界が明滅する最後に
よぎったのはあの影
さようなら、この世で一番無縁な君

◇◇◇

「水が濁っている。……つい先週、替えたばかりなんだが……あれ、減ってる?」
「ふんふん、そんなことより、自我って何? 自己って何? 個体って何だと思う?」
「……さしてそれは、宇宙にとって大した問題ではないのかもしれない。広大な宇宙にとって、意識とは余りに不確かだ……」
「そうね……ただ、私たちはそれを知りたくなってしまう、理解したくなる……違う?」

投稿者

大阪府

コメント

  1. このプラナリアの異変に気づいたあなたは、かなりのプラナリア上級者です。

  2. 深い思索、哲学、シニシズム、ユーモア、輪廻とリンネ…末恐ろしさのある素晴らしい作品だと思います。ひとつの個体でいることにうんざりしているので私もプラナリアになりたい。

  3. 写真、会話、黙考、体裁を変えながら展開する思索。自分とは何かを問いかける意欲作ですね。

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