美しいひと

つけっぱなしのテレビに
なんとなく目をやる
老人が ミコ と呼ぶと
ソソソと三毛猫が現れた
猫好きはここで吸い寄せられる
消すの止めた

薄くなった白髪と、深い目尻の皺
見覚えがあるどころか
昔よく見た俳優さん
わたしの中では
若い日のままで止まっていたけれど
面影はそのままで
その後は画面に張り付いた

鮎の解禁
投網漁
上手くいったりいかなかったり
ミコとふたり河原に腰かけ
飽きることなく眺めている
何がおもしろいのか
わたしにはまだまだ見えそうにない

庭の柿を好き放題食べていた猿が
最後の1個は薄皮一枚まで
丁寧に食べたのを
だれかさんみたいだと
呆れたり笑ったり

先に逝った妻は
ぼくの名前を忘れても
ぼくの恋人でいてくれたと
照れながら懐かしみ

愛車を手離した
重い荷物を持てなくなった
紙のぱんつを履きはじめた
変わっているんだろうか
そんな毎日にわくわくするよと

ウッドチェアに腰かけ
セブンスターを燻らせながら

静かに眼を細めて
ミコの頭をなでている

その姿を
美しいと見惚れたわたしも
いつか
そんな風になれるだろうか

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