拝啓、中島みゆき様 vol11 夜会Vol.18・19 橋の下のアルカディア

忘れ去られたもの、捨て去られたもの、置き去られたものが今回のテーマ

誰も寄り付かないようなシャッター街と化した地下道で
占い師をしている人身(ひとみ)
水晶で過去や未来を視ることができる力を持っていて、
かつてこの場所でなにかがあったのではないかという思いをずっと抱えている
一方、バーのママの代理として働いている天音(あまね)
過去に誰かとなにかを約束したような気がするものの、
それがなんなのか解らず、 それでも明るく日々を過ごしている

ある日、この地下道は来るべき水被害に備えて用水路に改修するため、
使用を中止する旨を伝えられる
伝えにきたのは、この街で警備員をしている高橋九条という男
実は高橋九条も理由あってこの地下道を離れられずにいる
通達を受けた人身も天音も、まだそれほどの危機感を感じておらず、
この辺りで何かを忘れたはずで、 それを探し出すまではこの街を去れない、と

人身は水晶で過去を占う
そしてそこに映し出されたもの

時代は遡り、かつてこの地下道は荒波押し寄せる深い河であった
度重なる嵐のために、何度も村落に甚大な被害を及ぼしていた
そこへ橋を架ける計画が持ち上がり、
その橋を嵐から護るために人柱をたてることに
選ばれたのは、人身御供という名の、
愛する夫と一匹の、すあまと名付けられた美しい毛並みのペルシャ猫と
ごくごく普通に暮らしていた一人の女性で
指名された理由は、ただ、人身御供(人を護ってくれるであろう)という名前

村長に指名されてしまった夫は、
何度も抵抗を試みるも聞き入れられるはずもなく
他の村人たちからの度重なる暴力的圧力もあって
泣く泣く妻を差し出すことに

人身御供さんは、残されてしまう猫に
何度もごめんねと謝りながら
いつか、いつか生まれ変われるときが来て姿は変わってしまっも、
きっと名乗りあいましょう
だから、お前だけは生き延びておくれ
きっと生き延びておくれ、と強く涙を飲み込んで願いを託し
白装束を纏う
そして、橋脚の中に沈められるその前に
愛する夫と猫を置いていかねばならない、死ななければならない
その最後の怒りの言葉として
荒れ狂う波は水じゃなくて人であると
ニンゲンは愚かで自然の驚異の前では
ただ祈り、祀り、占いに縋るぐらいしか出来ないが
しかしまた、ニンゲンが集団になったとき
それはそれは恐ろしい嵐よりも巨大なもののようになるのだと
抗議のように言い残し、橋脚の下に生き埋めにされてしまう

愛する妻を、差し出してしまった罪悪感と失った悲しみに耐えきれず
夫も後を追うように荒波の中へ身投げしてしまう
残されたすあまだけが、ぽつんとひとり、
大好きな飼い主を失くした悲しみに
いつまでもいつまでも鳴き続けるのだった

そしてまた現代へ
どうやらずっと雨が降り続いている模様
天音はうとうとと眠り始め、夢を見ている
ずっと会いたかった、ずっと探していた愛しい人に会えた夢を

そんな中、地下道に不審者が現れる
以前から気に食わなかった九条を探し出して、
落とし前をつけるために
九条がそいつらにやられたのか、
おでこのあたりに血をにじませながら逃げてくる
人身と天音はなんとか九条を匿い、
不審者をやっつけて窮状を乗り切る
天音が九条のケガの手当てをするのだけど
そのときに巻いた包帯から滲んだ血が、どこか日の丸を思わせる
巻いた包帯も、包帯というよりハチマキのようにも見えて

天音は手紙を開いていた
ラブレターであろうか?
その中に、私がこの地にいるのは、護らなければならないものがあるからです、
おそらくあなたの悲しみが、あなたをこの地に縛り付けるでしょう
しかし、危なくなったらどうか逃げてください
二度といけにえになどならぬように
緑の手紙に託します、と

雨はどんどんとその酷さを増していき
ただ事ではないことに気づき始める天音
人身もただの雨でないことに気づき、
避難すべく地下道の入り口まで行ってみるも
すでに入り口は封鎖されてしまっていた

そして、いつかの九条からの通達を思い出す
たしかに聞いたよね、この地下道は使用を中止すると

突然、天音はその昔、猫だったことを思い出す
そして、猫にしかわからない、見えない道を見つけ出す
そこには重そうな扉があり、
天音、人身、九条で力を合わせて扉を開いてみると
なんとびっくり、ひとりの兵士が立っていた

九条がこの地下道に居続けた理由
それは、祖父が戦争へ出征していったものの、
逃げて帰ってきてしまったためだった
非国民だ、恥を知れ、国のために働かざる者生きる価値なし、と
散々な非難を浴び、命からがら隠れるようにこの地で生きていたためだった
祖父は、飛行機(戦闘機?)を作る仕事をしていた
私は人を殺す道具を作るため飛行機を作っているのじゃない
人を幸せにするために作っているのだと書き残し、この地で亡くなった
祖父のしたことは、歴史上には記録に残らないけれど
代々、恥、として身内に引き継がれてきていたため
九条は誰にも知られたくない知られてはいけない思いを抱えつつも、
祖父がした行為は、本当に、恥、と罵られなければならなかったのか?
その狭間でずっと、苦しみながら生きていた

兵士の後ろには、一艘の戦闘機が
これに乗って逃げなさいと、兵士は託す
乗り込む九条と人身
天音だけがなぜか頑なに拒んでいる
そして、人身がハッと、天音がすあま、であったことに気づく
おいで、おいでと云ってみるも
すあまは、デカいから無理
私が一緒にいたんじゃ助からない
私のことは気にせず逃げて
またいつか会えるときがきたら、名乗りあいましょう、と
かつて人身御供に云われたことをお返しに云う
ひっかいたり散々抵抗したあげく
ゴミ入れカゴの中に逃げ込んでしまう

もう、二度とあのときのように天音(すあま)と離れたくない人身(人身御供)は
一緒にゴミカゴの中のへ
天音(すあま)を強く強く抱きしめる

豪雨によってこの地下道が水に埋まってしまうのも時間の問題
もう、一刻の猶予も余裕も云ってる場合ではなかった

九条はゴミカゴから出てきそうにない二人を
戦闘機にカゴごと括りつけ
そして飛び立っていく

この物語は「なぜか橋の下」という曲で始まるのだけど

  小さな子は叱られて お定まりのあの台詞
  昔からの習わしで 必ず聞くあの台詞
  聞き分けのない子であれば 一度は聞くあの台詞

  うちの子ではないからね
  実は拾った赤ん坊
  橋の下で泣いていた
  橋の下の捨て子たち

という歌詞があり、なぜ捨て子といったら橋の下なのか、
私も昔から不思議に思っていたので
この物語を観ていて、腑に落ちたような気がした
というか 幾人もの人が、この物語上では橋だけど
巨大建造物などを支え護るために、
人柱にされてきたという歴史
また、戦時中、防空壕だったというその場所に
隠れていることしか出来なかった人がいたという悲しい事実
そういった背景から、橋の下に捨てられた、が定着したのかな、
と

曲がホントにすばらしくて
例えば「問題集」という曲では

  あなたの問題集は私にはたやすく見える
  私の問題集はあなたにはたやすく見える
  取り替えてみたい気がする

他人の問題なら、こうしろああしろと云えるのに
自分の問題に関してはてんでダメだってこと、よくあるけど
あゝそうかそうだよな、これって問題集だったんだ、
しかも全然解けない、解けたと思っても解決できない
そうだよな、と深く頷かされたり

中村中ちゃんと石田匠さんがゲスト出演されていて
中ちゃんの声をはじめて聴いたんだけど、
カワイイなって思った
そして歌がうまい
物語前半のクライマックス、
置き去りにされた猫が悲痛な叫びを歌う「人間になりたい」
震えた
訴えてくる力が半端ない
思わず感涙しちゃった
中ちゃんを舐めてたすごい歌手だ

石田匠さんはもともとロック歌手らしく、
カッコイイしいい声してるなって思った
警備員役のせいかわからないが、ちょっと緊張気味?な感じもしたけど

解りやすい物語ではあるのだけど、
一点だけ、どうしても解からないところがあって
クライマックスで、突然思い出したように、すあま!というシーン
ん? どこで思い出したの?ってなってしまって
そこだけちょっと唐突だったような気がして
再演されたときに、修正が入ったみたいだったので
そこの箇所、もう少し解りやすくなってるかな、と思ったんだけど
修正されたのは、緑の手紙、の箇所だった

投稿者

東京都

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