ポメラニアン

   
   
   

君がいたずらすると咲く花があって

あいつは俺のあせっている姿を養分にして
にやにや微笑みながら
葉をぴかぴかと光合成させるやつで

この間も、俺の他愛ない一言に
あいつは怒ったフリをしてきて

俺は当然、長い付き合いだから
そんなのはただの怒ったフリだって
全くわからなくて

本当に申し訳ありませんと
ひたすらに謝り続けて

そんな俺を見て
あいつは満足そうに
すくすくと根を伸ばしていた
   
   
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君が泣くと咲く花があって

俺はそいつが大嫌いで
そいつも俺のことが大嫌いで

ある意味じゃ両思いなわけだから
俺はそいつを引っこ抜いてやろうとするけど

そいつはある意味じゃ君だから
間違いなく君だから

俺が君を
そんな手荒に扱えるわけがないので

なるべく出来る限り傍に近づいて
ポメラニアンよろしくちょこんと座って

そいつが泣き止んで枯れるのを
待つしかできなくて

罵詈雑言の1000や2000でも
思う存分、俺に浴びせてもらって

枯れるスピードを早めてくれれば
とてもとても嬉しいんだけど

俺はそいつのことが
本当にとにかく
何よりも
一番ダントツに
生まれてきたなかでも
他の追随を許さぬほどに
飛び抜けて飛び抜けて
大嫌いではあるんだけど

そんなそいつの
底の抜けたイカれたやさしさは
どんなに大嫌いでも
認めざるを得なくて

こんな俺ですら
そいつは傷つけることを
ためらっているようで
   
   
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君が眠いと咲く花があって

俺はその子に
もう寝ようかというと
その子は
まだ全然眠くない
といいながら
寝ぼけ眼をこしこしと擦る

だから俺は
もう一度その子に
明日も早いんだからというと
なんでそんなこと言うの
ひどいよ
といって
ひそかにポッケに隠し持っていた
泣いたときに咲く花びらを
俺に見せようとしてくるので

俺は慌てて
じゃあもうちょっとお話ししようか
といって

樹木の平均寿命って5000年らしいんだよって
なんでかは忘れたけどすごいよねって

最近仕入れた、何のためにもならない雑学に
がさがさのラッピングを施して
その子に膝をついてプレゼントする
   
   
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君が笑うと咲く花があって

俺はこの子のことが好きで
俺は見た目で判断するクズだから
この子が世界で一番きれいだから
俺はこの子が大好きで

というか
俺は君のことが好きで
俺は君のことを愛していて

まぁ、それは今は関係ないことだから
話を戻すと

とどのつまり
俺はこの子しか見たくないから
君には見えない身ぶり手振りで
電話の向こうの君を
なんとか笑わせようとして

俺のくだらない話と
俺自身のくだらなさが合わさったおかげで
クスクスささやく笑い声がうまれて
それがあまりにも美しいから

自分が大好きで大好きでたまらない
あのロックバンドの名前も
幼稚園の運動会のかけっこで
一番足の速い子に勝ったときの喜びも
パトカーのサイレンにまみれた夕日の赤色も
考えなくてもいいけど
絶対に考えなきゃならないことも
全部忘れて

そういう何もかもを
全部忘れて
ここでさっき置いておいた話に
戻らせてもらうんだけど

俺にとって君はあまりにもきれいだから
俺は君のことを愛しているっていう
ただそれだけのことで
要するに俺が言いたかったのは
ただそれだけのことで

君はそんなこと知らないだろうし
これを読むこともないだろうから
知るよしもないだろうけど
俺は君のことを愛しているって
これはただ、それだけの話だよ
   
   
   
   

投稿者

東京都

コメント

  1. 雑学にラッピングて素敵!
    そして最終連への収束がまた素敵!

  2. イチカワナツコさん
    お褒めに預かり光栄で御座います。
    日々精進して、ナツコさんのようなストレートに相手の感情に届く詩を
    いつの日にか書けるように努力します

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