こつぶ
それは小さな点のようであったか
人間は有史以来名前のないものを呼ぶことはできないもので
僕らはあなたを当面こつぶと呼ぶことにした
こつぶー
こつぶー
と妻のお腹に向かって呼びかける僕の言葉が
まだ耳の聴こえるはずもないあなたに
心地よい振動として伝わっていただろうか
やがて点は形となりお魚になり
お魚はやがて両生類のようになり
生物の進化を辿っていった
それでもまだ
4Dだなんて次元のよくわからない写真に現れたあなたは
ステレオタイプの宇宙人のような風貌で
やがて人間になるのではないかと思わせてくれた
こつぶよこつぶ
大きくなあれ
こつぶよこつぶ
大きくなあれ
こっちはいいとこだから
安心して出ておいで
みんなにっこにこで待ってるから
安心して出ておいで
そろそろこつぶも何だから
ちゃんとした名前を考えようね
ね、こつぶ
コメント
ひとの胎児が生物の進化の過程を辿るのを知った時遺伝子の記憶みたいなものが昂ったのを思い出しました。
かわいいです、こつぶちゃん。詩人の視点が輝いています。
うちは「まめ」と「ひかり」でした。
こっちはいいとこだから
安心して出ておいで
この二行、ぐっときました。そう言える世の中を、大人がきちんと築いていかなければいけないのだ、…と。
愛しいコツブ
この楽しい世界で、笑って泣いて苦しんで乗り越えて優しく生きて欲しい
たちまこさん、ありがとうございます。
「まめ」と「ひかり」!
なんて素敵なネーミング!
長谷川さん、ありがとうございます。
そうなんです、この世はいいとこだよと言うためには、ああここに生まれてきて良かったという世界や親として選んでもらった自分たちへの厳粛なまなざしも向けられるものですよね。
すごくそれを感じていたのを今も覚えています。
なつさん、ありがとうございます。
笑って泣いて苦しんで乗り越えて、、、
ほんとそう願いますよね!
イチカワナツコさん、ありがとうございます。
つか、ごめん、今じゃなくて過去(もう12年も前のこと)なんだ…
書いたのは今朝なんだけどね。
時折、こうやって時空を超えたような記憶みたいな新鮮な思いが降ってくるものです。
人生は面白いね。
ああ、時空を超えた記憶を詩に
それは、わかります
素敵なことです
なつさん、ありがとうございます。
この微妙な表現ですけど、わかってもらえますか?
やはり同じ詩を書く仲間だとこういった感覚もわかってもらえやすいのかなぁ。
息子がお腹にいたときに、なんて呼んでいたかなあ、と懐かしくなりました。みんなこつぶだったんですよね。いつの間にか、人間になって、生まれて、いろんなことで悩んでだりしていますが。
ayamiさん、ありがとうございます。
そんな風にご自身のことを思い出してくれて嬉しいです。
ホント、いつの間にか成長するんですね。
こんなに時間が経っているのがもう不思議でたまらないです。