由来

由来

海を見下ろす崖の傍らに
薄紫の柔らかな花弁が
表情を覗かせていた。
五月は ひとつの日を湧き上がらせる
花は日を見ていない
奇妙な午後だ。
かつて争いに敗れた帝が
流された島で目にしたという
花。
日は幾重にも降り積もる。
骨はしょっぱいか。
崖に立ち
今は波頭を数えるばかりだ。

投稿者

東京都

コメント

  1. 「骨はしょっぱいか。」という1行が好きです。いろいろと想像をかきたてられます。

  2. 北野つづみさん
    写真の花は、都忘れです。歳月をテーマに書いてみました。

  3. 沁みるウタです

    骨はしょっぱいか
    五月のひとつの日

  4. 那津na2さん
    歳月を経て、花は、変わらず咲き続けていますね。眺める人がいなくなってしまっても。

  5. 花から佐渡、しばしの別れのイメージ。
    「花は日を見ていない」
    「骨はしょっぱいか」
    「今は波頭を数えるばかりだ。」
    など、随所にドキっとさせられる表現が秀逸ですね。

  6. あぶくもさん
    順徳天皇の逸話から、都忘れという花名が付いたようですね。花言葉は「また会う日まで」「忘れ得ぬ人」など、別れにまつわるものが多いようです。

  7. 海を見下ろす崖まで、きっとそこには道があり、同じように形を変え続ける海を眺めてきた人たちがいるのですね。
    由来に耳を傾けてみたいと思いました。

  8. たちばなまことさん
    そういうふうに読んでいただけると、嬉しいです。ちいさな花から、遥かな歴史、郷愁を巡らせてみました。都忘れ。よい花名だと思います。

  9. あああさん
    こちらこそありがとうございます。
    歴史、歳月の底から浮かび上がったしょっぱさを、想ってみました。…私の骨も、しょっぱくなれたないいな。

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