天神下

雨の匂いがする
表通りから一歩奥に入ると
巷の輪郭が曖昧になった。
宵の狭間に
カンパニュラが咲いている
青い花弁を見つめた
一年経ったのだ。
女坂を下りたところで
身体に溜まっていた
蔭を
おもむろに突き放してみた。
昏れていく路地の隅
花の青さが
わずかに残っている。
夏にはまだ早い
春とも違う。
蔭は
匂いに被さったまま
こちらをじっと窺っている。

投稿者

東京都

コメント

  1. この詩からさまざまな気配の表現のすばらしい妙を感じます。
    「天神下」って地名なんですね。すてきな題で題も好き。

  2. 長谷川さんの詩はその多くが作者(もしくは詩の主体)が動きながら見聞きし感じたことが詩情豊かに伝わるものが多くていつも読んでいて本当に気持ち良いですね。本作品なんて冒頭からもうたまらない。いつも旅情を掻き立てられます。
    女坂に関する詩を読んだような読まなかったような…思い出せないですが、自分から切り離して眺める「蔭」の表現が素晴らしいです。

  3. @こしごえさん
    東京、文京区の湯島天神です。男坂と女坂があって、天神下は、昭和の雰囲気がまだ残っています。初夏の湯島の光景を私小説風に書いてみました。

  4. @あぶくもさん
    蔭は、自らの分身のような感覚で書いてみました。でも、あらためて読み直してみると、別人格としての「蔭」だったのかな、などとも想っています。動きながら見聞きし感じたこと、というご指摘、嬉しいです。私はたしかに、動きながら(歩きながら)詩を書いています。

  5. 雨の匂い、しました。
    湯島でしょうか。この季節にも訪れてみたくなりました。

  6. @たちばなまこと
    たちばなさん、初夏の、湯島天神の界隈を背景に書いてみました。今年も梅雨入りしましたね。季節感には敏感でいたいです。

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