一つの夜と一つの朝

何かを一つ失うごとに
何かから一つずつ解放される
と同時に
何かを得ることもある
何かを。

天から雨は落ちてくる。
青色の傘でこの雨を受けながら
道を歩いていくと
目的地を失った目に
お墓の石がしんとしている。

昼間の雨は上がったこの夜
夏の夜気は湿っていて
暗さは冴えかえり
雲の切れ間から
お月さんが光っている。

あなたのお心づかいに 深く感謝します
と書いた手紙は
出さないでおく。机の上で
ペンは一本。
思う力を信じる

夜は明けて
新鮮な朝に
お早う と挨拶をする。
一つの夜のいのちを失い
一つの朝のいのちを得た

投稿者

コメント

  1. 思う力、、、ですよね。
    本当にそこに奇跡が宿っていてほしいです。
    喪失と再生の物語が、夜から朝にかけてのリセット&リスタートと呼応して前向きな気持ちが表現されているように思います。

  2. @あぶくも
    さんへ そうですねぇ。思う力を信じるしかないというか、ですね。うん。あぶくもさんが、奇跡が宿っていてほしい、と思ってくれることも思う力の一つだと思います。あぶくもさんがそう思ってくれて、ありがたいです。
    そして、あぶくもさんが、前向きな気持ちが表現されているように思います、と言ってくれて この詩の要点をまとめてくれたことも ありがたいです。そのように思ってくれて、とってもうれしい。ありがとうございます。

  3. その人の回復を願う人がいる場合は、願う人がいない場合よりも怪我や病気の治りが早くなるそうです。願う、思うという行為には、間違いなく力があるということの証左ですね。
    俺も無事を、健康を祈っています。

  4. @BENI
    さんへ ああ、そうなのですね。うん、願われていることを知っていれば、願われたほうは勇気も頂くことが出来そうですね。BENIさんから いいことを教えて頂きました、ありがたい。ありがとうございます。
    BENIさんに祈ってもらっているお方の幸せを願います。

  5. 第一連。失えば解放されるというのは、何となく思っていたことですが、その後に続けて、それで得られるものもある、と。これは意表を突かれました。考えすらしなかったことかも。

    誰にどのような手紙を書いたのか、そしてどうして出さなかったのか。気になりつつも。こういったことを匂わせるだってのは、余韻をもたらすものなのですね。いろいろと静かに考えこまされる作品でした。

  6. @佐藤宏
    さんへ たとえば、一つの夜のいのちを失い/一つの朝のいのちを得た ということでもあると思います。また、失うということは、失うということを得ることにもなりますね。うん、まぁ、私の場合、物事にとらわれることが多いので、この詩のような考え方が出来るのは時々なんですが、物は考えようだと思うんです。

    うん、私は物を知らないのでハッキリとは言えませんが。
    俳句とか短歌って全部を言わないじゃないですか。まあ私に言えることは、全部を言わないことで、読者がそれを読んでくれた時に、読者のこころに広がりを持たせる効果があるのではないでしょうか。
    佐藤さんが、この作品を読んでくれて、この作品からいろいろと静かに考えをめぐらせてくれたことをありがたく思います。ありがとうございます。

  7. 雨の景色に溶け込む4連目、そっと共感いたしました。

  8. @たちばなまこと
    さんへ 雨の景色に溶け込むというふうに読んでくれた上に、その連にそっと共感してくれたこと うれしくありがたく思います。ありがとうございます。
    思う力を信じる しかない時もあると思うんです。なので、その辺に たちばなさんが共感してくれたことはとっても貴重です。うれしい。

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