梅雨の教室

五時限目の気怠い数学に
分度器を昏い空に翳して
透明な半月の向こう側の
斜線が象る鋭角を呆然と
眺めていた

人生や宇宙について何か
具体的な答えが知りたい
例えばこの偶数のような
完結していて揺るぎない
今のような

煙る校庭を横切る獣の群
誰かを弔う葬列だろうか
断続的なノイズが耳障り
鮮やかな朱の足跡に残る
説明的な程

自傷する少女たちの噂話
混乱する少年たちの猥褻
この空間に蔓延るものの
正体はちぐはぐな相関で
僕は憂鬱だ

雨は止まず

[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.090: Title by 容子]

投稿者

大阪府

コメント

  1. このトノモトショウさんの何とも言えないスタイリッシュな詩に、いつも意味を捉えきれない自分と、意味なんて取るに足らない、それでも立ち上る独特なイメージを捉えられたらそれでいいじゃないか、というふたつの声(正体のちぐはぐな)に苛まれ、僕は憂鬱だ。

    と、書きたくなるほどに好きだな。

  2. 高校生の頃に戻りたくない。あまりにも幼稚で無鉄砲で恥ずかしいから。高校生の頃から今までに積み重ね経験してきたもの。それはとてつもなく大きい。高校生の頃の私には決して知り得ない世界の真実の一部。しかしそれらを得る代償として私はまた高校生の頃に持っていたものを沢山失った。それはもう、どうしたってもう、決して取り戻せないのだ。私が失ったいくつかのものがこの詩にも書かれている。

  3. あぶくもさんとたかぽさんの独特の感想を先に読んで、いったいこんな胸を打つ感想を書かせるなんてどんな詩なんだと思っていたら、すごい詩だったという。最後の1行がそれまでのすべてを受け止めていると思いました。

  4. 1連目、超好きです。
    この空気感。
    教室は懐かしいですけれど、また通いたくは無いなと再確認しました。

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