螺旋

螺旋

沼のほとりに
菖蒲園があった。

群青や
赤紫
淡い桃色

寂しい白も

花びらは
どこか女の瑞々しい眼差しを
彷彿させた。
見つめられている
私も見つめ返す。

公園として整えられる前は
自然の沼だった
葦の繁った岸辺に
鏡のような水が湛えられている
かつて
作家はそう表現していた。

小説の主人公の死に場所を探して
彼女は
この沼に辿り着いた。
女を水に浸した。

澄んだ冷たさに
晒される
作家の思惑は、水の面と
しばし重なっていく。
初夏は巡るのではない

女の鋭利な漣の底で
螺旋を描くのだ。

果てたうなじと
菖蒲が
梅雨間の残照の下
ぬるい湿り気を増していく
その先に、何を捉えよう。

水無月。
花から眼を逸らした
色とりどりの眼差しが
短い追憶を抉った。

投稿者

東京都

コメント

  1. 詩自体が持つ感情のようなものと情景などが絶妙に融合していて、とても味わい深くすてきにおもしろいです。
    花びらは
    どこか女の瑞々しい眼差しを
    彷彿させた。
    部分的に言えば、ここも好きだし、
    初夏は巡るのではない

    女の鋭利な漣の底で
    螺旋を描くのだ。
    ここが特に好きです。
    写真もすてき、きれい。

  2. @こしごえ
    こしごえさん、丁寧に読んでくださりありがとうございます。葛飾区の水元公園にある菖蒲園です。先月、菖蒲を見に訪ねました。このあたりは芝木好子の小説『葛飾の女』の舞台となりました。菖蒲と、水の風景と、小説の主人公の女と、いろいろ絡めて書いてみました。

  3. 何なんだろうこれは、全体を通してずっと読んでいたい感覚。それでいて、部分的に「花びらは
    どこか女の瑞々しい眼差しを
    彷彿させた。」とか、「女の鋭利な漣の底で
    螺旋を描くのだ」などと書かれると、これまた何だかわかりませんが、たまらなくなります。

  4. @あぶくも
    あぶくもさん、…たしかに、わかりにくい部分があったかな、と私も思います。小説の中の薄幸な娘と、花菖蒲を、被せてみました。花菖蒲は、どことなく女性の眼差しを彷彿させます。

  5. @長谷川 忍
    さん、ごめんなさい。
    「何だろうこれは」「何だかわからない」という私の表現は、意味がわからないと言うことではなく、ずっと読んでいたい、たまらなくなる(素敵!)と、かなりポジティブな感想なのです。
    私の感想の方がわかりにくいこと書いてしまいましたね、すみません〜m(_ _)m

  6. @あぶくも
    あぶくもさん、ご丁寧に、ありがとうございます。m(–)m お気になさらずに。
    …実は、もう少し、推敲してみようと思っています。ここで頂く皆さまのコメントは、ほんとうに参考になります。

コメントするためには、 ログイン してください。