まなざし

まなざし

   

やあ、こんにちは。
見ない顔だね?どこからきたの?
変わった格好だね。
ちゃんとごはん食べてるのかい?

おや?

とっても礼儀ただしいね。
感心した。
僕の目に狂いはなかったわけだ!君とはうまくやれる気がしたんだ!君も同じだろう?
ここは僕の「家」さ!いいところだろう。
君がここに入り込んだのも無理はないね。
日当たりはいいし、水場はすぐそこだし、食い物にもなんとかありつけるんだ。
腹いっぱいにはなれないけれどね。
十分とはいえなくても贅沢は禁物ってやつだ。
満足を知ることこそ幸せというものなのさ。
さあこっちだ。
ここは僕の特等席なんだ。
柔らかくて見晴らしがいいだろう?
実はほかの奴には使わせたことがないんだけど、君は特別さ。
遠慮することなんかないんだぜ?

風が気持ちいいね。

ほらあっちをみてごらん。
あの山ほどあるでっかいタヌキ。
暑いときはあの後ろに行けばお日様も隠れるし風が気持ちよくて土がひんやりしているんだ。
あっちには僕の背丈ほどの小さなタヌキがちらほらいて、いい匂いつけになる。
ここは見通しがいいし、周りには繁みも多くて無礼なやつらが来てもすぐ隠れられるから安心さ。
どうだい?
気に入っただろう!
君さえよかったら、ずっとここにいていいんだぜ。それとも、君の「家」にいくかい?君を一目見て思ったんだ。僕ら、いい相棒になれると思うんだ。君もそう感じただろう?一緒にいよう。

あれ?
 

あぁ、そうか。お別れなんだね。
君は潮の香りがするもの。
今はもう遠くを見てる。
ありがとう。
君のことはわすれないよ。
また疲れたらあそびにくるといいよ。
ぼくはたぶんきっとずっとここにいるから。
さようなら。

 
 

(末)
 

投稿者

コメント

  1. 潮の香り、というところで、ぐっときました。人にも、猫さんにも、「居場所」があるのだな。この最終連目、作者の優しさを想いました。

  2. 長谷川 忍様
    コメントありがとうございます。
    過去作なのですが、これは詩であると作者が唱えれば詩となるであろうと念じ、モデルのにゃんこと添えさせていただきました。
    「居場所」がある。
    その言葉に温かさを感じました。
    しんみりに寄ってしまう傾向が強いのですが、この子との出会いは喜びにみちていたのです。
    そして、ぼくはぼくを優しいと思えないのです。
    ですが、いただいた言葉を否定したいわけではないのです。
    うまい言葉がいつも思い浮かびません。
    ですから、そう、「優しい」を送ってくれる方こそ、優しい人なのだと、想い馳せさせていただきますね。

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