空が墜ちてきた日

春雷鳴る午後の用水路にて
若い男女が目合い果てる光景を見た
その横を犬連れの貴婦人が通りすがり
電柱に小便をひっかけて発狂している

陽炎の向こう側で児童らが嘲笑し
たしなめる親達は朦朧と首を吊る
オートバイの坊主が次々と群衆を撥ね
不憫なる魂を輪廻に献上していく

彼岸花を摘む老婆は誰よりも静かに
街頭のあちこちに出没して息を引き取る
面皰だらけの青年連中は徒党を組み
掻き集めたコンドームを宙に放って祈る

氷柱滴る軒先で親父は番茶を飲みながら
幸福な家族写真を懐かしんでいる
背後で母親の亡霊に似た何者かが
厚化粧でささやかに笑っているようだ

[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.047: Title by kuku]

投稿者

大阪府

コメント

  1. 底力が強烈な詩だと感じます。
    この詩好き。

  2. 四季を感じるのと同時に、それぞれの死期を思い浮かべました。

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