この世界の終わりに
闇深き午前五時のシャングリラ
超能力者の俺は半身のまま
疾走する熱病列車に乗っている
耳の悪い中年男が向かいに座り
しきりに腕時計を確認している
時間はまだ進んでいるか?
世界はまだ生きるに足るか?
名無しの眼鏡の縁には赤十字の刻印が並び
銀色のガラスの点滅が反射している
鼻の奥まで指を突っ込んで
今まさにスイッチを押したようだ
これがテロリズムと呼ばれる彼らなりの戯れだ
ハハ予想通り
それから一時間後の車内
ということは午前六時の世界のエンディング
夜明けとは裏腹の曖昧な境界を生み出し
誰もが輪郭を失ってしまうのだ
取り残された俺の魂だけが
泣いている
のか?
再び時間を戻し
午前五時二十三分の駅前通りにて
偶然すれ違った義理の母親に
あなたは神を信じるが、
神があなたを信じることはない
と焦点の合わない視線を投げかけ
足早にホームセンターの方に駆けていくが
途中の交差点で消滅した
それから彼女には会っていないし
結局何を目的とすれば良いのかわからず
(はずもなく)
(夢は覚めて)
群集は爆発しろ
群集は爆発しろ
群集は爆発しろ
と、思わず俺は言っていた
午前五時に
[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.100: Title by 響瑠嶺]
コメント
私の存在している場所は生まれた時からずっと「世界の終わり」です。アルファベットで書く名前のバンドはけっこう好きだったりしてピアノの女の子の書いた小説「ふたご」(何故か以前、直木賞候補作でした)は読みました。チャットモンチーの似たようなタイトルの曲も好きだったり(脱線w)
。
世界が終わる1時間の間を行き来する時間移動可能な超能力者。世界が終わる原因は明記されていませんが被害者の1人である本人が実は加害者であることが暗示されているようです。12モンキーズを観ている時のような緊迫感を味わいました。
シャングリラ!(笑) 最近起こったいろいろを思い浮かべてしまいました。群衆は一度爆発して無数の思考の欠片になったほうが良いかもしれません。
内面描写とカメラワークと時間的交差など、とても映画的でスタイリッシュな詩だなと思いました。この詩の閉塞感を纏ったメンタリティは、『タクシードライバー』のトラヴィスが想起され、映画終わりのバックミラーの謎みたいなムードが漂っています。
コメント失礼いたします。
まったくもって、うまい言葉もなにもなく、どうしようかと悩みましたが、
「かっこいい…!」
とボソッと声に出ちゃいました。
ということを伝えさせてください…!