レンズ
熟成された毎日の、カバーがはずされる
紀伊半島の岩ばかりの、立ち入り禁止の海岸に
無人の灯台が、出入り口は鉄の扉で
基本的には立ち入り禁止の、螺旋階段
母親の胎内を案内するように
少年たちが、みずみずしいレモンを齧りながら
不明瞭な世界地図をひろげて
区域ごとに管理されている、カバーがはずされる
巨大なレンズは、感じ出したペニスよりも
遠くの国を見るために、磨かれている
ヤスパースの誇りとしているのは
精神的未来の秩序ではなく、現象の時間である
海の予定する嵐ではなく、水死する時間
ただ美しい娘たちの水着の、空に遊ぶ
バルーン・バスト・ビーチバレーの
ここの床にたむろしている、時間には虚無は静かだ
なんどでも、笑い話は、つきることなく
やがて巨大なライトが眠りから覚める
少年たちの細い身体の、明暗が夜を呼ぶ
くらくなる、身体の存在をいやがるように
階段を回りながら、地上へと近づいていく
おまえの姉ちゃんの寝相は、あれは、それは、これは
蛸に食わしてしまえ、ウミウシに
灯台はかたく、白く、夜に立つ
あふれくる嘔吐を感じるなんて、うそだろ
人気の少女たちは、ウインクする、ゆびさきでまねく
おいで、おいで、こっちへおいで
手作りのガンで、花火をうちあげよう
危険なんてものは、びびる神経の、うすい陰毛の
やけどする花火の
そして、少年たちの手から、たちのぼる、煙
岩ばかりの、立ち入り禁止の海岸
星に向かって、射精する
夏は流れる
波はいつものように。
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