第三火曜日
黄昏、夕闇、暮雲がぷかり
穏やか、近鉄、ゆらゆら揺れて
徹夜の眠気がそろりそろり
閉じかけの目が微かに捉えたボロボロのイーゼル
綾に色を塗りたくったカンバスが鈍く光って
鼻歌を歌うあなたは今日もご機嫌みたい
それ以外はなんにも知らないけれど
朝霧、風吹き、さらりと流され
葉っぱ、散る散る。紙吹雪のよう
あなたは今日もカンバス抱えてドアの端
小さく本を読みながらイヤホンを時折外し溜息
寂しそうに泣きそうに鮮やかな色に髪染めて
目を伏せながら歌うあなたは今日も1人みたい
それ以外はなんにも知らないけれど
昼時、鐘鳴り、小糠雨降り
車窓に水滴残していった
今日あなたは袴姿、車内に薫る白檀の香り
本も絵の具も黒いイヤホンも光の中に溶けたのかしら
どんな感情も知らない腕に重そうな学位記抱えて
仄かにも歌わないあなたが今日は人形みたい
それ以外はなんにも知らないけれど
コメント
大阪にいましたので、「近鉄」はよく利用しておりました。墓も橿原にありますので。奈良の街と田園の中を行く車両はなつかしいものです。
@坂本達雄
ありがとうございます。近鉄は畿内人に身近ですよね。学生も沢山利用しますし、のどかな電車というイメージです。
1人、人形みたいなあなた
ゆったりと生きるやうにして
自身は少し
寂しいけれど
少し忙しく
日の当たる電車に揺られる