キシロイ
冷たい街角の、境界線を越えようとして
背後から重たく波のように
自我の細胞をこうげきしてくるもの
ゆるやかな坂道をくだりつつある
知性の砂ぼこりが、やがてやむのを待つしかないのだが
しめきられた、昨日までの店の前には
あざやかな『良心』がヒナギクのように立つ
それらも冷たい重力のありかを示している
帰るしかない午前零時、自我の腕から、ナマコのように
ダイヤモンドの時計が落ちる
坂道の呪力にさからいながら
禁止された「愛」のリンドウを思い描く
それについてのリポート、それはついに「実験の部屋」
やすらかに、その身体は遺体となり
ほぼすべての空間から「邪教」とされる
自我の背中がヤマカガシのようにひきつる
そして満月の今夜、隠れつつある月の表面の「しぐさ」から
失くしてしまった恋人の蝋燭を求め
すなわち道をいそぐ、月の方へ
略礼の進行するこのときに、野性の病気の言葉がいとしい
月の色はあいかわらず、消化線の影響を受けて
リチュームの翳りのあわい影の部分
あなたはどこから、その影の流すエキスを飲むのか
リールは巻かれ、月はこちらへ近づく
それらの感覚する今夜の「料理」
手づかみで、食べられる今夜の「石」「恋人」「認識」
自我ははるかに南の空に眠る
重力のあるこの街を抜け出して、はやく行こう
やさしく肩をだき、なぐさめる言葉の、その心臓の方へ
あなたの喉は、雲を横切り、カササギの飛び去り
共通の願い、祈り、サクラメント、ボイジャー、
自我の身体は、光の散乱する洞窟を出て
「生と死の」どちらでもなく、まざりあう
ドラゴンの腹に、いみきらう、いさましい、その息をする
コクテール、際限のない欲望の重力を
あなたにさしあげる、蛇たちの舌の、からまりつつ
早くこの街を出て、かすみつつある自我のこぼれ、
月夜の荒涼とした、知識とねばりけの、坂道を抜け出して
わたしたち、そして「十字架」の、喫水線を越え
月の上に光る自我の笑う
目的地は、ミンダナオ島
シベリア
ダガルカナル
サボテンの島
そして月へ。
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