うつりき
蝉と汗で悲鳴をあげた朝。
割に合わない約束と共に出掛けた気分は圧縮した暗雲と仲良しだ。同調するスロットルは内省と自制の繰り返しに捻くれてしまい、開けっぱなしの心弁は閉じ方を忘れてしまった。
項垂れた道をゆく残穢
薄雨降る進展に嫌気と苛立ちが押し寄せて命ほしさにキルを押す。気休めと鼻で嗤い木陰に腰掛けて雨宿りをしていると、霞む紗幕越しからみえる光景が静かに雲を晴らしていくのを感じる。
不思議のすべてをそそいでゆく
夏の残翅が咲いているのは
次の実りを根付かせるため
深淵を覗く覚悟があるならば
殻を脱ぎ捨てていきなさいと
穿った声が聞こえてくる
足許掠めるシオカラトンボ
空を纏う背に乗って
聳える草花を飛翔する
縫い付けるような操縦に
一緒になって目を回す
亀がお辞儀に勤しむのは
狐の祝いの挨拶巡り
マナー違反は即退散
羞恥のジャンプが波紋呼ぶ
青柿みつけて止める足
無邪気に戯れあうケモノ達
秘密と親密の実験場
渋って離れた子を見つけて
幼い肌に触れたのは内緒
雨はいつの間にか止んでいた
遠くで嘶きが聞こえてくる
駆け寄って跨がり
火花散らす鋼鉄の心臓
強く握り
捻る音、勇ましく
うつりきな道をゆく残滓
水滴はそのままに
季節の魔法を靡かせた
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