コスモスの陰には

コスモスの陰には

気配を感じ
人の流れの中で振り向く

気配の先を追う
何もない。

再び歩いていくと
視野の中を陰が走る

慌てて追う
駅前のバス乗り場の光景が
広がっているばかりだ。

通勤電車に乗り込む。
スマートフォンの画面に
目をやる。

そのうち何もかもが
ありふれた現実のさなかに
埋もれてしまう
陰を内にはらみつつ
私の姿も揺らいでいく
溶けていく。

この頃夢を見ていない
むさぼるように眠っている。

コスモスの陰には
いつも
誰かが隠れているのだ

そう語った写真家がいた。
話の前後はもう忘れてしまったが。

立ち止まり
彼の表情を想像しようとしたら
早く先に行け、と
何者かに背中を小突かれた。

投稿者

東京都

コメント

  1. 『だれも知らない小さな国』のコロボックルをイメージしながら読んでいたら、完全に寝落ちしていたようです。
    誰にも小突かれずに、ゆっくり自分のペースで夢も現実も味わいたいものですね。

  2. @あぶくも
    あぶくもさん、日々の「陰」の中に詩が隠れているように思います。陰を追うことが、詩を書くことなのかな。何者かに小突かれても、日常に埋没したくはないですね。

  3. 心のなかに眠っている何かを呼び起こされるような
    不思議で素敵な感覚になりました。

    綺麗なものの影に何かがいる・・
    それを求めて手を伸ばす

    元々あったものではない、自分で何かを創り出す感覚のような

  4. @ザイチ
    ザイチさん、そういうふうに読んでいただけると、嬉しいです。風景や、物事の、裏っかわのほうに、何かが潜んでいるのではないか。…そこに、創作の源があるのかな。

  5. なるほど
    コスモスのさりげなさは、誰かを隠すためのものだったのか。。。
    今度、写真を撮るときにさりげなく探してみます。
    読み進めるうちにコスモスのイメージがさりげなく膨らんでいくような
    柔らかくて素敵な詩でした。

  6. @nonya
    nonyaさん、コスモスのくだりは、藤原新也さんの言葉です。写真家で、文筆家。今、コスモスの季節ですね。花を眺めつつ、陰を想っています。ありがとうございます。

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