ポリフォニー

信じている人には空は青い
樹立ちの陰に入って休む時には
約束された言葉が必要となる
自らをシンボルのように思い、そして言葉は飛行する
いりみだれ乱闘する言葉の汗
「あなた」はラッキョウの音を身体にまとう
信頼される音楽的接近の原野から
シャツを脱ぎ、帽子は潜航する
奇妙な脱落の部分は寝間着のようになじみつつある
ソクラテスはウクライナの小麦畑を散策する
はげた男の哲学的感想を聞こうではないか
パイプを片手にハイマースが空を行くのを見る
たいした料理はいらない、けれど歓待せよ
大統領、わたしはこのように言いたいのです
死者はもう語りません、わたしは死者のかわりに
語るのです、死者のために
小麦の袋を積み上げて
空をおおいましょう
もう空は必要ないのですから、死者には
戦車がたくさん通過したあとに
老人がひとり歩いています
ぬかるんだ道を歩きます
何年もはいて来たこの靴
この靴の中に納められているわたしの足先は
すでに大地の方へと帰還する
それは神の描いたひとつの絵画の片隅に
わたしが登場するからです
キツネのように
毛糸の帽子をかぶっています
大統領、わたしソクラテスは言いたいのです
ひとりの生きる者として、そしてここに「死者」として
空の青さを語る者として
麦の穂にふれる生きた哲学者として
爆裂する時間のその外部はすでに奇声をあげる
手は手として、足は足として、頭は頭として、爆裂する
わたしはその死者の言葉を伝えようと思う
水をください、コップ一杯の水を
喉はすでに焼けている
燃える屋敷の居間にわたしはいる
そして見なさい
言葉はすでに死者として葬られる
ウクライナの地に。

投稿者

岡山県

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