河口での蜆掘りにて

抜けなくなった
足が
泥に囚われて
長靴が
ぎっと
握られ
締め付けられて
足首に
ふくらはぎに
吸いついていく
足首が
ふくらはぎが
血の気を失っていって
温かさを
奪い取られていく

  そんなときは
  大きく息を吸って

  こうしてやるのだ!

囚われた
足を
差し出してやって
泥の中で
ぐりぐりと
こねくりまわしてやって
くすぐってやるのだ
そうすると
泥の奴
笑い始めて
掴んでいた手を
緩めてしまうのだ
その隙に
足を引っこ抜く
解放された
足首が
ふくらはぎが
血管が
笑い始めて
こそばゆくなって
こっちも
思わず
ゲラゲラと笑っちまうんだ

投稿者

高知県

コメント

  1. 田植え期の田圃で水田と戯れているようでとても楽しかったです。沼に絡め取られる長靴のあの感覚、嫌いじゃないです。

  2. 初めの緊張感から一転、愉快な感覚を覚えた明るい雰囲気になって思わず笑顔になりました
    好きな詩です

  3. コメント失礼いたします。
    昔、修学旅行で底無し沼に飛び込んで死にそうになったことを思い出しました。
    長靴は置いていってしまいました。
    この方法をしっていたら、置き去りにはしなかったかもなぁ、と想像させていただきました。
    ありがとうございます。

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