恒星からの手紙
柳の枝を鞭にして、
叩く、ロケットのエンジン部分
星間飛行する毛髪のブロンドの噴射する
やわらかな星座から、あしうらのいたましい
ひびわれて水晶体の妊娠する
ふるさびたカメオの嵐の夜の
背骨をつたってながれおちる
ピクラの伏した外殻の溝はふるえる
岩石で積み上げられた砦の入口へとつづく
動脈のほりすすむ肉体の機重性
奥深くタランチュラのイクチ、それらはラオス近辺の
舗装された細い首のいれずみ
敏捷な昆虫たちは枝から飛び立つ
新しい銀河の誕生する水面の生ぬるく
おまえはすでに、敏感な空をもたらしている
けだるさと、ニジマスと、弁証法でもって
快楽とやましさとオゾンのうえをいく
斜形のキラ、出棺するゾラ、まぶしくて
放散虫のとろりと全身する
またたくまの愛撫の柳の鞭です
真空の世界の無音の耳をかみ
森羅万象のコズミック、はずかしい体躯のひらかれて
あるところまでは、水のように
樹々の陰はわたくしを隠している
放たれて矢は、やわらかな肉は、シンボルは
水のように星の内部から欲情する
ヒヨドリの声がする
そしてマシンガンの悶える声がする
おまえの肉体のやわらかな悲しみの
ひどく感覚する凍土の押し開かれて
恒星はすでにアンモニアのラブを組み立てている
慇懃に手をねじこんで支配する
記憶のパラグアイへと
水銀の海の崩壊して駱駝の胞子を呼ぼうとする
おまえとともに、おまえの愛とともに
恒星は等級の逸楽を支配するだろう
タライの中のゆがんだミュージック
彼岸花の甘い蜜をほしがって
泣いたおまえは
地下室の
手紙。
コメント
声に出して読んでも気持ちいいです。
“それらはラオス近辺の
舗装された細い首のいれずみ”
ここ、特に好きです。
愛することは、いつも声にだしてほしい、愛することはこの世界の、花の蜜ですから、とらわれることなく、好きなものを愛してほしい、詩はいつも愛されるために、声をあげる。
坂本さんの詩はどれも高次元の流れを持つ銀河の岸のような詩(ウタ)ですね。私には難しい詩です。
でも、難しい詩も難しいなりに読んでいておもしろいです。まぁ、残念ながら私にはこの詩の全てを「わかる」ことは出来ませんけどねぇ。私には読解力が無くて ごめんなさい。
でも、 おまえとともに、おまえの愛とともに 、から最終行までが特に好きです。「手紙。」で終わるのもすてきです。
追伸 でも、これらの詩を「感じる」ことは出来ると思います。
ああ、感じてください、宇宙はとてつもなく広いです、人間はあまりにも瞬間です、こなごなの世界に、ぬるぬると、詩の中でもだえ苦しみましょう。