何気ない日常<溺愛編>

なあ、
うん、
オレが、一緒に死のう、言うたらどうする?
いいよ、
え?
ウチも一緒に死んであげる、
ホンマか、
ホンマよ、
ホンマやな、
ホンマやってば、
世界は、
世界は、
こんなにも美しいのに、

どうやって死のか、
痛いのとか苦しいのは嫌やで、
太宰みたいに入水自殺とか洒落とるけどな、
ダザイって?
太宰治よ、
誰よ、
知らんの、
知らんよ、
学校で習ったやろ、
えー、そんなん忘れてもうたわ、
知らんかったら意味ないな、
うん、ってゆうか、入水自殺って苦しいんじゃないん?
せやろな、
ほら、
生きてることより苦しいんかな、
それは知らんけど、
知らんの、
知らんよ、

最期にしたいことある?
えー、なんやろ、
なんか美味いもん食べたいとか、どっか行ってみたいとか、
特にそんな欲ないけど、
まあ、普段から欲ないもんな、
強いて言うなら、
うん、
虹が見たい、かな、
虹て、
なによ、
見たことないん?
ないことないけど、
あるっちゃあるか、
手が届くほど近くでは見たことないから、
手は届けへんやろ、
そんなんわかってるし、
比喩か、
ヒユね、
比喩って意味わかって言うとる?
意味なんてないよ、
なにそれ、
意味なんてないやん、すべて、

それよりもう一回、
えー、好きやなあ、
好きやからやろ、
そうじゃなくて、
死に向かう時、初めて生を感じるんかなあ、
どういうこと?
なんでもないよ、ほら、
あ、
ん、
あ、
見つけたぞ、
あ、
何が、
あ、
永遠が、
どういうこと?

[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.082: Title by 左斜め上]

投稿者

大阪府

コメント

  1. ブラボー、ランボー‼️
    いや、ゴダールのレクイエム?

  2. 会話劇は好きですよ。これは小説ではないし脚本でもないし歌詞でもないし定型詩でもない。まさしく自由な現代詩でしか表現できない形です。前後の事情の分からないこの短い会話のなかに豊かな人間性が感じられました。

  3. 世の中がこんなんだからか創作を感じない、言葉が生きているように思いました。

  4. 心臓がきゅってなります。
    書けそうで書けないトノモトさんにしか書けない詩だと思います。
    生を確かめるために小さく死ににいくことを想像しました。

  5. 「」で囲わない工夫。関西弁の会話が流れるような音楽に聞こえます。今更こう言うのは、トノモトさんへ対して失礼かもしれませんが、筆力があるからこのような詩の力を出せるのでしょう。
    あと、死など に対する率直な会話の内容がとても好き。最後2行の終わり方も好き。
    何気ない日常<溺愛編>、という題が、詩(死)の内容とリンクしてる感じがさすがです、

  6. 足立さんも書かれていましたが、このような世の中なので、会話がよりリアルに響いてきますね。哀しい会話なんだけども、ほろりと笑ってしまいます。「比喩」のくだりなんて、…ちょっと、泣き笑い。

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