一人遊び
病気でいたい、と思う
常々体の端々がぴんぴんする
元気な頃から思っている
病気でいたい
踏まれたから枯れるような命はないんだけど
踏まれずに生い茂る悲しさみたいなものはあって
いつかどこかで小さくなって
死ぬ程苦しんでいたい
誰に教わったのかよく分からない絶望とか
休日になるたびに
全ての悩み苦しみが捨て去るべきものだと思っている愚かさとかを
病気が全て解決する
これ以上幸福にならずに済む
そのままでいい
不幸で居続ければ
誰が助けてくれなくても
何かしらよく分からない鈍痛と暮らしていける
そんな日々を送れる
孤独がいけないのだ
孤独は人生から光や音を失わせる
誰といようがいまいが全く面白くもなんともない
ただの痛みの連続に
言葉を失う程の退屈を伴って
本当のことをするだけの作業が始まる
そのせいで
嘘もつかずに生きられる人を信じるようになる
皮肉なもんだ
食器がかちあう音を好きになったり
死に行くものを美しいと思ったりできるようになるのは
人生の豊かさを考えるようになるのは
年だからだろうか
僕はいつも君に会いたい
それこそ狂ったように元気な頃の自分のままで
病気になったから
卑怯な程君を好きになる
病気でもいい
コメント
世の中には思い悩むことのない人種がいくらかいますが、それこそ病気なのかもしれない。年齢を重ねると身体のどこかが常に痛いし、眠れないし、すぐお腹は下すし、毎日なんだか疲れていますが、健康になるための努力もしないのは、やはり病への憧れなのかも
しれません。
@トノモトショウ
痛みは生への渇望の源で、
死線をさまよう方の鋭くなった感覚を見ていると憧れも感じます。
創作をしたがる人間特有の羨望でしょうか。
ある程度管理できるとはいえ、健康であるかどうかは運命ですからね。
病気と作品の評価との関係は面白いです。
“病気でいたい”
なんだか衝撃を受けました。
こんな風に書けている詩はなかなかみないです。
“踏まれずに生い茂る悲しさ”に共感します。
君が出てくる優しい転調も含めてとっても良い!と思いました。
@たちばなまこと
有難うございます。
必ず死が待っていることを考えれば、生という状態は既に病気なのかも。
現実に「病気」で苦しんでいる方の感覚とは違った、
創作の中でだけの思索です。
健康であるがゆえに、病気の苦しみをないがしろにしたくないな、と常々思います。