カーマイン
救われたい
救われたいと言いながら
誰もが罪など知らなかった
穢れなど気にしなかった
本当の傷の痛みを知らず
治らない病を知らなかった
救われたいと言いながら
本当に誰かを救おうとして
揉んどり打って堕ちていく
それ見たことかと聖書を齧り
禁漁区に逃げ込む私を
臆病者の醜い化け物め
賢者に飼われる為だけの慰み物と
楽しそうに嘲笑う美しい獣達
その手で何人殺し
血肉で餓えを満たしてきた
くたびれた足で灯の消えた家に帰る
夕暮れの悲しい程の燃える事
この空腹を知らない癖に
この寂しさを知らない癖に
涙に驚いて背中を振り返ると
全てが夢の中であったと気付く
自分を憎み
自分を殺し
自分を哀れんだ
そこにある見えないままの翼に
何度も飛べると騙された
名前すら忘れてしまった愛が
形を失ってなお頬に冷たく伝う
この世界は言葉
終わりと始まりの道を繋ぎ続ける
永い夜に捧げられた祈り
コメント
はじめに頭がカーマインに染まりました。
氷のような血が悲しさに溶かされるようにも読めました。
@たちばなまこと
血の色という名前の色はないみたいなんですが、カーマインからは鮮血や赤い炎をイメージします。
冷たくなった血を温めるものが悲しみである時もあるのかもしれません。
有り難うございます。