昔の音

スマホのやり過ぎで
疲れ、腹も減り 
近所の和菓子屋へ
おむすびを買いにいった 

店の奥に主人の大きな背中が見え 
古い機械が
ぎったん、ばったん、餅をつき 
合い間に主人が、手でこねる

――あれ、いいですね
――ええ・・・旧式なもので

初老の奥さんは
小声で言った
(辺りの空気は昭和であった) 

「お茶乃友」と印刷された
紙袋に包まれた 
おむすびの温度を、手に
歩き出す 

電波にまみれた僕の脳裏に
ぎったん、ばったん 
餅をつく音が
いつまでも繰り返されている 

投稿者

東京都

コメント

  1. お店の雰囲気や空気感がすてきに伝わって来る詩ですね。
    初老の奥さんが小声で言うのも、短い言葉なんだけど その方のお人柄を感じさせる。
    おむすびの温度などもいい味。
    2連と最終連が呼応して最終連の着地がすてき。

  2. 「おにぎり」ではなく「おむすび」がこの詩には合ってることを読みながら実感しますね。私の家の近くにも、古くから続くお団子屋さんやお煎餅屋さんがあり、この詩を通じて、そういうお店の中の空気感まで伝わりました。

  3. 何かを頭の中で反芻して
    日常を生きて
    おむすびをたべる
    そのトランス状態は最高です

  4. こしごえさん

    ありがとうございます。 昭和感が伝わり、嬉しいです。

  5. あぶくもさん

    ありがとうございます。 こういうお店は残ってほしいと、願います。

  6. 那津na2さん

    ありがとうございます。 アナログ感覚を保ちながら、日々をあゆみたいです。

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