笑顔の向こう
形式主義に浸る人生はサーカス
片足で曲乗りする道化師の如く
上っ面の言葉で本質を誤魔化す
他者と同じ思想を持つのが美徳
エキセントリックに翻る自我を
不意に脈動する心奥へ秘匿した
予定調和の裏で貼り付けた笑顔
綺麗事が飛び交う濁った空の下
だが狂気を制御するのは難しい
もう凶器を隠し通す事は出来ず
いつからか低速なレイテンシー
条件反射で無数の肌に増える傷
哀しみを越えた夜明けの向こう
今はまだ知らぬふりして行こう
[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.075: Title by 雪柳]
コメント
辛辣な指摘から、狂気の発露、最後の2行の締めの構造が良いですね。そのうちきっと知らぬふりにも限界が来るということにも気づいていそうな不穏な先延ばし感がまたいい。
ソネットを作るのはそれほど難しいわけではないですが、これを書けと言われても私には書けませんね。ソネットと言ってもやはりこれはトノモトショウならではの作品であります。
韻って気持ちいいものだなぁとトノモトさんの詩を読むと改めて思います。
今日は“綺麗事が飛び交う濁った空の下”なので、綺麗事をただの綺麗にする小さな努力をしたい。