風景の中の関係

迷いの領域が解けていく
構わず街の輪郭に消える
形にすらならない苛立ち
湧き上がる幻影だろうか
舗道の行方が曖昧になる
その向こうに広がる彷徨
一人でいることに馴染む
または客観として捉える
確かな表情を弄るために
肌の触感をなぞるために
無数の映像となるために
日々は再び沈殿していく
重みをぼかしていくのだ
風景は心象の分だけ潤む
対峙すれば煽られていく
距離を置き記憶を重ねる
意識の底に濾されていく
生々しい無意識を眺める
雑踏は仄かな色彩に滲む
大気そのものに転調する
リズムを意図的に絡める
誰かの心象を丁寧に包む
時間は断片的な個の集積
諦める瞬間の濃い微笑だ
もう両の目を失っている。

投稿者

東京都

コメント

  1. はっきりと対峙するものを、詩の中に持ち込む時、世界を交点とする、世界を斜線とする、矛盾するものは、自己の影である。まるで無意識のアンバランス。直接の視界である。

  2. 定型文字数のやつ、来ましたね。
    「風景は心象の分だけ潤む
    対峙すれば煽られていく
    距離を置き記憶を重ねる
    意識の底に濾されていく
    生々しい無意識を眺める」
    ここ、好きだなぁ。あと、最終行が不穏なようでいて、静かに目を閉じて心を開いているのか、あるいは破顔大笑ともとれるようなところが味わい深いです。

  3. 長谷川さんの羅列詩(とオレは呼んでいます)は新鮮。どうしても冷静な視線になってしまうものですけど、ちゃんと叙情もあるのは流石です。

  4. 居る場所が限りなく液体だったとして、振ってみると沈殿物は表情を変えてまた沈殿を繰り返し、そこに何を見出すかの多様性も認識します。目を失っても皮膚から見い出したい。
    揺さぶりを感じました。

  5. @坂本達雄
    坂本さん、時々、定型の中に自らを無理に押し込んで書いてみます。そうすることで、浮き出てくるものがあるのですね。坂本さんがご指摘くださった事柄は、まさに浮き出てきた部分です。「世界を斜線とする」「無意識のアンバランス」。…よくわかります。まさに、アンバランス。

  6. @あぶくも
    あぶくもさん、ありがとうございます。時々、四角い?定型詩を書きたくなるのです。起承転結をとくに定めてはいませんので、お好きな部分を切り取って、想像していただけると、作者としては嬉しいです。最終行だけは、ちょっと意識しました。

  7. @トノモトショウ
    トノモトさん、羅列詩、なるほど。たしかにそうかもです。自分の詩の根っこは、叙情だと思います。定型詩を書く時は、なるだけ叙情を削って書こうと思っているのですが、…やはりバレてしまうのかな。

  8. @たちばなまこと
    たちばなさん、丁寧に読んでくださり、嬉しいです。最終行は、意識して書いてみました。「目を失っても皮膚から見い出したい」、このご指摘に、なるほどと思ってしまいました。

  9. 圧倒的な客観視。自分ですら遠景になってしまう瞬間。
    長谷川さんはひとり歩きの天才だな、と思いました。
    あっ、のんべいの天才でもありましたね(笑)

  10. @nonya
    nonyaさん、風景の中に自分を溶け込ませて(解け込ませて)いけたなら、本望です。遠景も理想です。が、まだそこまでの境地には辿り着いていません。修行?を続けていきます。…お酒飲みながら、ですね。

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