サッカースタジアム
彼等がボールを蹴るので、しばらくは
時間が止まるでしょう、しばらくは
コマ送りで見るならば、しばらくは
給水タイムになるでしょう、しばらくは
振り上げた足はとまったまま、核兵器のまま
そのまま愛された時間の、核分裂のまま
かたずをのんで、爆風のまま
ボールは力学的に反動する、閃光のまま
人は蒸発します、影を残して
サッカースタジアムの声は、黒い雨となって
降り続けます、この街のすみからすみまで
息をしているのは、ゴールの前に立つ男だけ
その彼の眼にも黒い雨はしみいります
土は黒く染まり、声援は虚しく染まり
流れる黒い水は白線を消して行きます
そうなれば男の顔は、プルトニウムの影を帯び
ガイガーが、ガイガーが、鳴ります、鳴ります
ふと時計は止まります、一本のシュートの時
そこで止まった心臓は、すなおにカウントします
愛した女の首から、はじかれたボールがラインをわる
低く飛ぶ、核弾頭のミサイルを
かわるがわる愛してください、その人のように
規則正しいステップの、足はあがる、ステップの
世界はすでに曲率の、わずかな曲がりを、愛します
カーブしてゴールへと、わずかにカーブして分裂する
光り、それは光り、肉体を破壊する
ようやく時間は動き出す
三万匹の猿の軍団が、サッカースタジアムを占拠する
彼等の声が
彼等はすでに
ボタンを押すだろう。
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