世間話

私の家と墓地との距離は
壊れた膝でも文句を言えない程である
洗濯物を干すのが億劫なのは
きっとそれのせい

はるか昔に
これがご先祖様だ
と信心溢れそうな顔で紹介された
磨き上げられ等間隔で並ぶ大質量とは違い
窓のフレーム中央に主役顔で鎮座するそれらは
満員電車かナイトクラブに見える

ご近所の老婆が沈と語った
身寄りのない人があそこへ行くのだと
それが彼女の将来であることも
嘆いていたが自虐的ではなかった

自ら望んで孤独なの
孤独でありたくなかった人のために
あの中に放り込まれるのは嫌
海にでも流してくれればいいのだけれど

皺を伸ばすかのように
手と手を擦り合わせ
沈黙する

孤独だとそれも成し得ないですね
口走った言葉に
老婆は少し目を細めた

投稿者

神奈川県

コメント

  1. 全体もそうですが、2連目の比喩がキャッチャーで心が喜びました。
    寂しいような、悟った明るさ、爽やかさのような、不思議な読後感です。

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