ダンシングガール
音楽にのって、君はまわる
酔っている、ダンシングガール、君は回る
夜がふけて、朝が来て
くだかれた肉体のまま君はどこへ帰る
精神をふりほどいて心をぐだぐだにして
せんれつな感情のおのおのは
すべてすぎさった色彩ガラスは
ほこりをかぶったレコード盤のきずぐちをひろげ
ほとんどの肉体は眠りへと
ひとがたは流され、君は曇天の空姫である
草の葉の朝露のひとつふたつ君の口にいれて
やすらかな世界はあるのか
トケイソウは厚みをもって回る
たくさんのダンシングミュージック
そのほとんどを覚えている君は
コーラを飲みながら男友達からのメールを見る
死んだ世界の、物質の残骸の世界の、アルバイト
近くのコンビニへ、ひさしぶりに無音のまま歩く
三時頃、男友達の部屋で手作りの
ハンバーガーを食べる
彼のオナニーのために脱ぐ
港の近くで車から降りて歩く
遠くのビルは霞んでいる
わたしの心の中にあるのは無音の波である
キラキラはしているが
何も言わない
この時間、ベッドもいらないし、音楽もいらない
たぶん魂は存在しない
世界に存在するものは
わたしの心に存在するものは
ペットボトルのようなもの
それとも焼き鳥の串のようなもの
花壇のすみに細いツルが伸びていて
数えるほどの葉がついていて
変な花が咲いている
今夜もわたしはダンシングガール
踊っている時、世界は消えている
消えた世界がわたしの世界だわ
誰もいない、誰も奪えない、わたしの世界
音楽さえ聞こえない
肉体はたぶんエレベーターみたいなもの
世界はたぶん無からできている
わたしは踊る
今夜も。
コメント
コーラと、男友達と、オナニーのために脱ぐ心意気がすてき。
好きに踊ればいいじゃないかと思わせてくれる昂りです。
ディスコフロアーで見た少女からの連想です、彼女のちらばるこころの、汗のつぶ、ミラーボールの一瞬の、ひかりです。