昼下がり

時計台の針の途方に暮れていた白昼
駅前広場は水を打ったように静謐
小川に沿ってうねり始めると再び刻み始め
時は葦を泳がせ 魚を揺らし 白鷺をくねらせた

ふいに水神橋をくぐると潮の香りが耳朶を打ち
ふと在りし日々が連想された
わたしはいつもそうであった それはいまも―――
白銀に踊る波頭にしばし浸っていた

投稿者

茨城県

コメント

  1. …もともとは以下のような詩でした(未完ですが)。記録として残します。自分でも自分の詩がどう変わったのか関心があるので。

    駅前広場には時計塔が3時を指していた
    警察学校の正門には若い警官が凛々しい姿で
    小川は楽しげな音色で葦を揺らし
     
    魚を泳がせ 鷺を憩わせていた
    騒ぎ立てて覗き込む少年らの側を過ぎ
    流れに沿って静謐そのものとなって
    真っすぐ進んだり曲がりくねったりして

    ふいに 水神橋をくぐると潮の香が
    思い出したように郷愁が
    あれは 迫りくる孤独の連想だったのか

    日が差して波は白銀にふるえていたのだったが
    あらぬ方角に視線を落とし
    過ぎ越し方を

  2. 改稿されたものはイメージや詩の強度が凝縮されたものとなっていると感じます。
    2連目の1行目が特に好きです。

  3. @こしごえ
    さん コメント、ありがとうございます。凝縮、そうかもしれません。いまはいろいろと作風を変えつつあるのですが、凝縮ということも意識してみようかしらん。

  4. 佐藤さん(の詩)はまさに、こしごえさんのコメントにある通り、『濃縮』の魔術師ですね。その濃縮作業の中で繰り広げられる比喩表現がより一層味わいを深くされているなぁと思います。

  5. @あぶくも
    さん コメント、ありがとうございます。私は自分の詩を客観的に見るのはなかなか難しいのですが、そう仰って下さると、なるほどそうなのかな、と思います。目下のところ、少しばかりの文法上の破格(例えば他動詞なのに目的語を添えないことで、ある種の心理的効果を引き起こす、など)・共感覚(例えば、「月が見える」とせずに「月が薫る」とする、など)・凝縮あたりをキーワードにして詩作してみたいと思います。

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