ハーモニー

ハーモニー

私の指を愛してくれますか
南方のジャングルのクジャクの羽の様
死者の肉体の失われて行くさま
泪橋は野生の蔓のからみつつ
私の心は発熱するカンボジアの様
ワニの背の水のくぐる、うずのつづく
はだは汗のにおい、くぐる村のにおい
アワ、ヒエ、キビ、穀類よ
豊かに栄え、豊かに亡びる
私の指は川ぞいの水車の小屋に隠され
中から私を呼ぶ女の声
その紙はしまっておいて
その小屋にはモダンアートの作品が並び
女は毎日それらを見てすごした
私の作品もそこに並べるのだと言う
外では蝉が鳴いている
少しばかり行くと小さな滝がある
女はその滝壺へ裸で入って行く
女は古風な肉体をしていた
古びた石の神殿の柱の上に立つ神々を思う
神々は芸術家の指先を愛した
クジャクの輝く羽の様に
浸水する村々の
夕霧、あさぼらけ
レモングラスの丈高い草むらが
私を隠す
あの淡水魚が銀色のうろこを光らせて
私のふとももに触れて来る
それは女の指のようになまめかしい
芸術を思いこの村に暮らしている
牛と人がしろかきする風景
牛と人が夕空を帰って行く風景
おやまあ、アイイロの瞳の人
草むらに女が隠れている
その手には鎌が握られている
額に光る汗は太陽のこぼしたままに
隠れて待っているのだ、男を
今日こそは、ひとつの作品を完成させる
心にはクジャクの羽がゆっくりと広がる
唇もかかとも
熱くなる
シスレーのように
それともクジャクのように
私の指を愛してくれますか。

投稿者

岡山県

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