バニラ

悲しいと言っても助けてとは言えなかった
代わりに何を奪われるか分かったもんじゃないから

詩人に生まれついてしまったものは
詩人として死ぬしかない

人間として生きようとするものは
人間として死んでいく

僕は僕だけでも君に何かを差し出したかった
奪われるよりはその方がよほど心が痛まないもんだから

世界はそんなに綺麗じゃないし
君はそんなに良い人じゃない

君が欲しかったものは僕にはあげられなかったもの
僕がして欲しかったことは君が出来なかったこと

すれちがう姿はまるで踊っているみたいだった
僕ら思ったより随分器用に身をかわすんだな

出来もしないことが夢の中に表れては忘れる
忘れたものを思い出したようにある日形作る

君は笑ってるから君の影にピースで耳を付け足す
僕があんまり泣くから君はそっと目隠しをする

僕はブラックコーヒー、君は角砂糖
煙草に付けたバニラの香料

余計なことだったのかもしれないな
それがなきゃ分からなかったとしても

投稿者

神奈川県

コメント

  1. すきまから、ベッドのすきまから、ふとんのすきまから、まどのそとの、空をみる、なにからなにまで、きせつのすきま。

  2. @坂本達雄
    物と物との間には永遠のすきまがある、という映画のワンシーンを思い出しました。

  3. 必ず代償がある
    詩人に生まれたからには、、、

  4. @那津na2
    何に生まれても代償はありますけど、詩人が失うものってなんだろうな、と思うと分からないですね。

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