ヤマボウシの初夏
夏に向かう空を反射してしろい
ヤマボウシの花のような葉は
四枚ずつたくさんに
空と平行に広がりひらき
湖面の、雪野原の、
広げたピクニックシートの、
まばゆさに呼ばれて降り立つ
飛ぶ鳥や虫の目線になれた
今年も見逃すまいと向かう
今までにみた一番のヤマボウシの大木は
あまり人が通らない抜け道の脇に立ち
来年には私も、通る理由がなくなってしまう
どこへ行っても
人が知らない嬉しいものを
見つけることは得意だけれど
上手くさよならすることができなくて
お別れも言わぬまま、
変わらずあると信じているから
二度と帰ろうとは思わずにいる
ほら、いつだって
夏に向かって高く飛べば
まぶしい空を反射してしろい
大木の、ヤマボウシの花のような葉だ
コメント
自宅から駅までの通勤路に、ヤマボウシの木があります。毎年、夏に白い花を咲さかせます。私にとってはごく当たり前な光景なのですが、その当たり前は、実は大切なことなのではないか…。本作品を読み、そんなことを想いました。
@長谷川 忍
コメントありがとうございます。
ヤマボウシはよく庭木としてみかける木ですが、葉っぱのこんもり繁った大木のヤマボウシをみたとき、その花のような葉が、空から見ると真っ白に目立つような角度、空に水平に咲いることにはじめて気づき、書きました。