破壊
「アメリカでテロが起こった瞬間、セックス真っ最中だった男女は無数にいる」
僕が初めて本物の女性器を目撃したのは
まだ寒さの残る四月半ばの
いびつな空気が香る部屋の
薄汚れた斑のシーツの上の
発熱した両足の間、だった
殿元聖 19歳(当時)
その裂け目はうっすらと濡れ
暗い穴の向こうからは何かが産まれる時の
あの独特のキーで鳴る
あの不快な声が聞こえ
俺は自らのペニスで耳を塞いだ
まるで同じ
※その頃の僕は
夜や自身の闇を透過させるような
詩(と呼ぶべきかどうか今でもわからないが)
を書くことに没頭していた
「詩人の条件とは何か?」
「うーん、考えたこともないなあ」
「それだよ、考えない人だよ」
「ロダンだっけ?」
「全く違うけど、的を射てる気もする」
インターネットで知り合った何人かの女性が
僕の詩を好きだと言い
僕自身の闇を好きだと言い
結果的にそのうちの何人かと寝た
顔も知らずに会って
本当の名前も知らずに抱き合って
知ったような気分になる
という快楽
積み重ねては砕け散るような
「知ってるか?性的な欲求はそのまま死の欲求に直結するんだと」
「生きてるって感じがするけどなあ」
「まやかしだ」
「幻想かあ、ところでそれって詩の話?」
燃え盛る二本のビルから
真っ黒い煙が濛々と立ち上るヴィジョン
遠い国の話だ
[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.049: Title by 聖呂未]
コメント
みんないつもありがとう。
三部作の二作目。9.11の時は、当時の彼女とディズニーランドに行ってました。
そんなわけでよろしくね。
小説より面白い。ずっと短時間で読めるし。そんな詩を読みたい。この詩のように。
9.11の時は、ラスベガスから帰ってその余韻もさめない頃、夜中にTV中継を見ながら「終わったな」と思いました。つまり終わりの始まり。でもその1ヶ月後またラスベガス行きの飛行機にちゃっかり乗っていたのでした。がらがらでした。
「殿元聖」登場の三部作、完結まで目が離せないな。一箇所だけでてくる「俺」が気になる。
911は仕事でプロジェクトが始まったばかりの熱と忙しさで会社にいるところで中継を見たんだったなぁ。仕事なんかやってる場合じゃないと思ったのに、意外とみんな平然と仕事しててその個人の温度差に驚いたんだった。
「知ってるか?性的な欲求はそのまま死の欲求に直結するんだと」
ここにうなずきます。
この詩は生と死の詩だと思いました。この詩を拝読して、どんなことが起きたとしても、生と死は続くんだよなぁ、とも思いました。生物が存在する限りはですね。
そしてこの詩を書いたトノモトさんに乾杯!