落とし物

何もない画面に向かって
キーボードの文字を打つ
指先だけからおれが生まれる
生まれ変わる、何度でも いつでも
海に沈めたグラスの中の水
青空に掲げて陽に透かして見る
輝いた 
揺れて輝く
さっきまで海だった、ただの水だ いまは
海かどうかなんて水には関係のない話
何度でも、死ぬ 何度でも 
きみの手を引いて歩く砂浜 まだ人が少ない場所
寒い風が吹いてくる 波は引いていく
繰り返し繰り返し 前に出る爪先 砂に少し埋める
かもめ? 
きみが伸ばした指先のずっと向こうへ
遮られることのなさが
おれに存在の絶対を信じさせている
時間の断面に映った無限
寄せてくる波に濡れて 歩く
足跡は消されておれたちは何も残さない
重さだけを繰り返す
何度でも 何度でも
世界に自分のものはない すべてを借りたら返す
おれたちは宇宙の始まりから在る原子で構成されている
明滅する現象 透き通らない明るい灰色の空の下
生まれたおれがまたおれを生む
世界は数えられない
きみもまたひとりだと数えられない
部分のないすべてとして
だが、それはおれには関係のない話
貸し借りの帳尻は最初から合っている

水平線だ
かもめじゃない

投稿者

北海道

コメント

  1. 貸し借りの帳尻は最初から合ってる
    カッコよい!
    ライムも完璧

  2. @那津na2
    なつなつさん、こんにちは。余ったひき肉はキーマカレーにする派? それともマーボー豆腐派? ゼッケンです。
    >貸し借りの帳尻は最初から合ってる
    >カッコよい!
    >ライムも完璧
    そこを拾ってもらえてうれしいです。。。が!、そこだけ? 
    ほら、もっとあるでしょ、そこに至るまでの計算された行の積み重ねとか。褒めるとこ。
    なつなつさんの好きなカタルシスだってそこはかとなく。その後の断絶とかも。
    いや、贅沢は言いますまい。なにしろ、ぽえ会に来て初のコメントがなつなつさんという僥倖。
    記念にします。

  3. 好きだなあ、これ。
    めちゃくちゃくだらないことを言いますが、「おれ」「きみ」をひらがなで表記する詩人は信用できる、そう思っています。

  4. @大覚アキラ
    大覚さん、こんにちは。余ったひき肉は(以下略)、ゼッケンです。
    >「おれ」「きみ」をひらがなで表記する詩人は信用できる
    いや、わたしが悪かった。先のなつなつさんへの返信でわたしの作品をもっと褒めろと無理強いしたせいです。みなさん、大覚さんが悪いわけじゃないんです。いよいよ褒めるところが無くて困ってしまっただけなんです。ひらがなの「おれ」なら信用できるなんて大覚さんは真顔で言ってないです。もしこれ本気で言ってるなら、○○するラーメン屋は信用できる論法の思い込みの強いブロガーといっしょです。それとも「おれ」は信用できて「オレ」または「俺」が信用できない根拠があるというのなら、聞きたい。大覚さんと「オレ」や「俺」との間に過去、いったい、何があったか、聞いてみたい。小一時間。あるいは「オレ」だと思ってたら「ラテ」だったとか、そういうこと? 「オレ」には騙されたぜ、みたいな。
    まあ、とにかく、悲しき男よ、
    >好きだなあ、これ。
    誰よりもゼッケンへの愛深きゆえに。

  5. 確かに、そこはかとなく
    カタルシスが香る、、、

    カッコ良い!

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