街とんぼ

 
 線路沿いの路肩に這う茂みは朝顔らしき
 蔓と葉に花を二輪つけていた
 花は控えめでいて澄んだ紫陽花色
 歩み寄る私の指先に
 四枚羽の片側二枚つままれて
 運ばれてきたトンボ

 茂みの葉が数枚重なる陰に置いても
 半分しか隠れないトンボの体
 もっと茂みの深くにと羽を
 つまみ直した時だった
 ピクリともしなかった足が細い蔓を
 つかんだ

 まだ羽の傷ついていない
 トンボの王様
 君がもう街を飛べないのならば

 ここなら君にふさわしいだろうか

 君を見つけたのは京阪電車の走る駅前通り
 雑居ビルの階段下で横手に
 餃子の王将店舗の入口扉がある石畳

 通りからも外れる茂みで
 動かなくなったトンボの尻尾に目を落とし
 立ち上がると
 踏切音が鳴りはじめた

 

投稿者

滋賀県

コメント

  1. トンボを見つめる作者の、細やかな想いが伝わってきました。街の描写に臨場感がありますね。私も、街(町)を背景にした詩を好んで書きます。参考になります。

  2. @長谷川 忍
     お読みくださってどうもありがとうございました。
    私の方こそ、長谷川様の作品に触れさせていただいて、これからも
    色んなことを感じ学ばせて頂きたいと、思っております。

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