音色

人を好きになったことがない
人を殺そうと思ったことはある
どちらにせよ何もしなかったなら
悔過なんて必要ない

愛はそれだけで罪で
償いとは救うことだ
恐怖で泣く人の手を取って
死なないと約束することだ

この世界には色んな人間が棲む
全てを知っているのは私
作れるのも壊せるのも
終わらせるのも始まらせるのもみな私

暗がりに光が差して
自分も飛べると気付かされる日が
来るんじゃないかと期待する
私もまた神のようにふるまえないまま

寄り添っていたものが光だと気付くまでに
どれだけ嘘を重ねれば良い
偽りに対してどれだけの良心で応えれば
この熱を奪われずに済む

蝙蝠たちのお喋りを聞くのにうんざりして
独りで過ごすために月を見ていた
そうしていると夜の女王の沈黙が聞こえる
優しい溜め息をついて笑う

光るものなどひとつも見えない
何を光だと思ったこともない
昨日それが私にとっての絶望だったのに
あくる日にはそうあるべきと星の名前で呼ばれる

指先の冷たさだけが本当のことだ
他の全ては書かなくても良かったこと
鳥のように動かなくなった私の恰好を笑えばいい
朝が来たんだ、この部屋にも

投稿者

神奈川県

コメント

  1. きしむものは、メリーゴーランド、みずたまりのビーナス、さわがしく、遠近をくりかえす。

  2. @坂本達雄
    自分自身も不快なくらい騒がしい感じになるんですよね。養生するようにします。
    コメント有り難うございます

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