ノスタルジア
熱帯夜が続く晩
シャワーを浴びた濡れ髪を
タオルドライしながら片手に取ったテレビのリモコン
たまたま
点いた画面は歌番組だった
アカペラでの女性の歌声が誰かの曲をカヴァーしている
誰の曲だったのか
聴き覚えはあるのに思い出せない
思い出そうとする
どうしても
歌は流れてしまって知った曲名に
このバンドを教えてくれた彼の面影が
よみがえった
おもかげの彼は黄色いチャリンコに跨ったまま
私に聞いた
「どこ行くんや。」
金閣寺道へ通ずる西大路太子道のバス停に
一人でいた私を見つけた彼が
こぐペダルの回転速めた
夏の坂
出逢ってまだ間もなかった二人は
あのバス停で
はにかみのある嬉しさを真っ直ぐ向けて笑い合い
私を見送った彼は背中と脇に汗にじむTシャツで
午後のキャンパスへと走った
熱帯夜が 続く晩に
氷のかすかに 鳴るグラス
二十余年を経て今
私へ呼びかけてくる
あの日の遠い彼の声
「どこ行くんや?」
コメント
嗚呼ノスタルジアですねえ。夜中の円町の吉牛とか、平野神社の桜とか、北野天満宮の梅とか、積雪の金閣とか、西大路周辺にはノスタルジア垂れ流しな感じが漂ってます。そういうところに「どこ行くんや?」の言葉がリリーさんには強烈なスイッチだったのですね。
@あぶくも
あぶくも様へ
お読みいただいてコメントくださり、どうもありがとうございます。(^^)
この作品のタイトルは最初「遠いバス停」でした。改稿で「ノスタルジア」に
変わりました。「どこ行くんや?」も、最初は第六連の頭にあって最終連が、
私の呟きの一行「さあ…?どこ行くんやろな。」で、締められていたのです。
改稿でこの最終連を切り落とし、彼の問い掛けを最後に持ってきました。
学生だった自分が聞いた「どこ行くんや。」の彼の声と、熱帯夜の晩に
聞こえてきました「どこ行くんや?」の、遠い声。明らかに、私の胸に
違って聞こえる問い掛けでした。
あぶくも様に、丁寧に読み取っていただきまして、とても嬉しいです。
ありがとうございました。( ´ ▽ ` )
みずみずしい青春の一刻。まるで青春映画のワンシーンを観ているようです。
そして過去と今を繋ぐ「どこ行くんや?」の声。
爽やかさと共に人生の深みを感じることができました。
拝読していて、映像が、脳裏に浮かんできました。黄色いチャリンコ、夏の坂、氷のかすかに 鳴るグラス…。追憶って、不思議ですね。
@平瀬たかのり
様へ
お読みくださいまして、ご感想いただき誠に嬉しく、ありがたく思います。
そんな風に思って頂けまして、…この作品を改稿重ね仕上げることが出来て
良かったと自分で感じられました。どうもありがとうございました!
これからもどうぞ、よろしくお願い致します。
@長谷川 忍
様へ
長谷川様の「Just the Way You Are 」に深く感動いたしました私は今、長谷川様に
お読みいただけて、たいへん嬉しいです。
追憶とは…しみじみ本当に不思議なものだと私も思います。心によみがえります
シーンが鮮やかに、現在の自分へ何かを語りそしてまた問いかけてまいります。
町歩きのお好きでおられます、まち(街、町)を背景にした作品などもお書きに
なられます長谷川様に、いつも憧れを感じています。わたくしもいつか長谷川様の
ような…素敵な作品を、書けるようになってみたい!です。(*^^*)
ご感想くださいまして、どうもありがとうございました。
どこ行くんや
の、テンションが
どんどん想像できるようになって素敵な2人になったのか、何かあったのか
夏の苦しさもあったのかなあ、いや、楽しい日々だなあ
@那津na2
様へ
どこ行くんや
を、そのテンションまで想像して二人を、連想してくださいましたことに、
詩を書きました喜びを今感じます。(*^^*)
お読みくださって、どうもありがとうございました!
ご感想のコメント、嬉しくてココロに沁みてまいります。