成虫

重なっていく言葉の透き通る薄さが愛おしくて
愛していると言えない
晴れた午後
余計なことで出来た街で余計な時間を過ごしている
僕らに付けられた一つ一つの余計な名前
この世界はとても冷たい
太陽が温めてくれていると気付く迄のいくばくか

君は
自分が一度も行けない場所を教える僕の話を
心から信じている
四つ足動物の僕のように
餌を探して歩き回らなくても幸せになれる
自由な人
いつまでも続く平和ではないから
そして本当に今が平和か確かめることも
僕達にはきっとどうしようもなくままならないものだから
四つ足動物は真実が好きだ
君とのこれからそのものみたいで

しっかりと言葉を組み立てて
頭の中に描いた青空を
柔肌に消えない傷を刻むように
生きていこう
世界はきっとこんな所なのと決然と間違っていく
君の話を聞くのがとても楽しい
多分それは君が間違うことをとても楽しんでいるからだと
渡り鳥達が力強く励ましている
間違いは間違いだ
そうやって
君はまた笑うことを覚えてゆく

どうかまだ意味のない言葉を
言葉に依らない思いを
取り合った手に残る冷めない熱を
その笑い声は
羽化したばかりの蝶の羽ばたき
これが夢のようだと確かめられたら
尽きない願いの渦に巻かれて
君がいつだって悲しいのだとしても

ドリップコーヒーのように
濾し通される思い
溜まった幸せが冷めるまで
金のことでも構わない
誰にも何だかよく分からない愛の話をして

投稿者

神奈川県

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