春うらら
六棟の高層マンションが近距離で建つ
そこに住民の憩いの場として
児童公園とグラウンドが設けてある
広場の桜並木には二人掛けのベンチ
一脚に休憩中の清掃員が一人座っている午後
春うらら
他にグラウンドには誰の姿も無いと
見留めた途端
マンションの陸屋根から下降気流が瞬く間
並木周辺を覆い隠す
よく見ると
ピンクの うず潮がどよめいて
高度を下げながら広場の中央へすり動く
くっきりと
もも色した大きな円盤が
着地すると一瞬で消滅
立ち入って見た広場の砂地に
地上絵のようなドーナツ型した跡がある
そうして花片の波濤から現れた
ベンチに座る清掃員
あの人は何を見たのだろう
どうして消えてしまわなかったのか
コメント
桜の花びらを巻き上げて降りてきた春の強いビル風が、未知との遭遇的な宇宙観で描かれているようで、連れ去られなかった清掃員が逆に何ともミステリアスです。
@あぶくも様へ
お読みくださって、ご感想いただきましてどうもありがとうございました。
不意に目にしました春の自然現象でした。「もも色の円盤」というのが、またアニメチックな余韻もあって。記憶につよく残るシーンになりました。ビル風が去った後の、広場の静けさ。ベンチに座る清掃員の姿が…別に、白鬚の翁になっているわけでもなくて。春うらら…。
それが、あぶくも様のおっしゃってくださいました通り、わたしにも
ミステリアスだったのです。
印象的な自然現象でしたね。そこに、あぶくもさんのおっしゃるようにミステリアスな要素をからめたところがユニークでコミカルでもあります。清掃員の記述に、BOSSのコマーシャルのトミーリージョーンズを連想してしまいました。
@たかぼ 様へ
お読みくださいましたご感想のコメントを、どうもありがとうございました。
BOSSのコマーシャル!(^.^)なるほど…と、その様に連想していただけましたことが、とても嬉しいです。(笑)
どうして消えてしまわなかったのか
が、気になります。
感受性センサーが高めな作者のことだから、
そのうち消える瞬間も経験するのだろうと思う。
はて?
それで良いのか
?はて
@足立らどみ 様へ
お読みくださって、ご感想のコメントをいただきまして、
どうもありがとうございました。m(_ _)m
春のうららかな風光ですね。
その中のわずかな時間での出来事だと想像するのですが、ふしぎな詩だと感じます。そのふしぎさを出させる位の リリーさんの筆力の高さも すてきです♪☆^^
@こしごえ
様へ
お読みいただきまして、ご感想のお言葉をお寄せくださりどうもありがとうございます!(*^^*) 嬉しいです。
「春うらら」を書きました頃の、何枚も何枚も推敲した原稿用紙を思い出しました。
決して、頭で考えるがために書き直すのではなく。自分の実体験をどう表現すれば、感じたままの感動を映像化して客観的に伝える事が出来るのかな……。そこに作為的なものも技巧などの意識も全くありませんでした。ただ、素直だったのです。
現在書いている作品に、こんなピュアな熱意がこめられているだろうか?……。なんだか余計な想いが、私の作品のほんとうの光を今曇らせてしまっているかも知れない。
初心に還ろうと思います。
こしごえ様、ありがとうございます!!m(_ _)m