会わない時間

みずみずしさが
漂ってきた。
振り返ると

街路灯のむこう
葉桜が
その緑を
空へ伸ばしている。

今にも雨が降り出しそうな
夕まぐれ
ひとつの声が
聴こえてきた。

…夏を迎える少し前の
 夜の空気
 私、好きなんですね

久しくお会いしていない
詩人仲間のTさん

二次会の席だ
ほろ酔いで
ぽつり語った
彼女の、少し寂しげな表情が
脳裡によみがえる。

彼女と会わないでいる時間
というものを
考えてみる。

ざわりと
葉が揺れる
まるで染み入るような
緑。

雨は、降るだろうか。

投稿者

東京都

コメント

  1. 会えない、ではなくて、会わない、んですね。
    そのお方と会わない時間で、そのお方をおもう時間も豊かな時間なのだろうとこの詩を拝読してそう思います。
    …夏を迎える少し前の
     夜の空気
     私、好きなんですね
    というそのお方のこの言葉が特に好きです。
    最終行、雨は、降るだろうか。というふうに問いかけることで、この詩の余韻がいっそう響きます。

  2. @こしごえ
    こしごえさん、丁寧に読んでくださり、嬉しく思いました。Tさんは、実在の詩人です。彼女が語った言葉も、そのままです。もう20年、お会いしていません。…元気かな。

  3. “みずみずしさが
     漂ってきた。 ”
    雨の気配の表しに「ああ、いいなあ」と。
    新しい緑も差し色ですてき。

  4. @たちばなまこと
    たちばなさん、新緑の頃が、好きです。もう間もなくですね。その頃になると、いつもTさんの言葉を思い出します。…雨の気配も。

  5. コメント失礼いたします。

    ぼくも、みずみずしさ、に惹かれました。
    葉脈を伝うように、みずみずしさが
    身体(おもいで?)を伝うような、そんな何か素敵な感覚が浮かびます。

  6. @ぺけねこ
    ぺけねこさん、誌友の言葉を聞いて後、毎年、5月半ば頃の季節がいとおしくなりました。今年も、もうすぐ巡ってきます。みずみずしい季節です。

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