魔女の庭
1.
カーテンは開かれた。鶏がピアニストを虐待している。夏の庭、痙攣する身体。貧しさは問題ではなく、ただ裁判官なき審判が迫っていることへの恐怖が私を振動させる。
2.
コーヒーは大胆にも机の上を占拠した。倒れたカップが床に落ちる瞬間、世界は停止する。愛のない世界に髑髏の塔、琵琶法師の声。
3.
停止と振動との間に精霊が潜んでいる。野性が理性を侵犯するとき、垣根の上に腰かける女はデーモンと重なり合う。無論、コーヒーは床に滴る。
4.
不在者は贄がリュトモスを変容させるのを目撃した。それは生の病であり、病の生であった。機械の歯車は夏に繁茂する。不愉快なことだ、魔女にとっては。
5.
鶏は世界のすべてを受け取ることができず、それゆえに首を刎ねられる。刎ねた首を重ねて塔にする。滴る血はピアニストを恍惚とさせるが、どちらがどちらを虐待しているかは明白なのである。
6.
そして、終わりである。裁きは下される。裁判官なしに。あるいは人工知能なしに。強いほうが悪いに決まっているのだ。偏見に満ちた琵琶法師の口調は厳しい。
7.
私は窓を開ける。夜の深みへと飛び込んで石になる。そして、始まりである。ホームレスがピアノを弾き始めた。
コメント
「魔女の庭」はたくさんのことが起きていて大変そうです。
そして1に戻って同じことがその庭で永遠に繰り返されるの
でしょうか。その庭空間は無間♾地獄なのかもしれません。
魔女は恨みつらみから生まれるとライトノベルで述べられて
いましたが私もむかし、今もよくネットでみるネット友人に
「貴方は詩人に向かんし無冠詩人にすらなれない」と言葉を
知らないそいつ(考えてみたら全然友人ではなく単なるアホ)
に言われてからずーとずーとずーーと根に持って生きています。
(嘘です。作品につられて変なコメントになりました。謝辞)
できましたら、「魔女の庭」以外の地域が全平和でありますように
と、お祈りいたします。楽しく読めました。
作品載せていただきありがとうございます。
@足立らどみ
コメントありがとうございます。
ここでの魔女はWitchというよりはHexe(hagzussa)に近く、
承前
呪術師的な性質を持つ半精霊的存在です。それゆえに「魔女の庭」は外と内との境界線上に存在する(まさしくhag-zussa:垣根の上に腰かける女の)ようなイメージです。
まずは番号によって区切られた構成に惹かれました。それはまるで魔女の呪文のようで。言葉は変容しながらも繰り返され、エッシャーの絵の中や、あるいはブレアウィッチプロジェクトの森に入ったような気分になりました。
@たかぼ
コメントありがとうございます。
ブレア・ウィッチ・プロジェクトというのは確かにそうかもしれませんね。この詩はホラーではないのですが、ある種の(バタイユ的な意味での)供犠をモチーフにしているところがあるので。
魔女狩りに怯えつつ
デーモンとまぐあう
魔女と詩、素敵です
@那津na2
コメントありがとうございます。