渡り鳥の歌
本当に愛とか恋とかどうでもよかった
死ぬ前に一度でもいいから誰かを助けてみたかった
自分だけが生き残る為に言葉を教えられるのが本当に嫌だった
他人の為に自分の大事なものを犠牲にして、それを特別に思わないこと
かっこいいってそういうことだった
恋心はその為にあるだけだった
立ち上がるのに勇気が要った
言葉は喋れなかった
頭の中はめちゃくちゃで(どうめちゃくちゃなのかがよく分からないぐらいに)
メンタルクリニックはまるで野戦病院のように静かだった
もう誰も口を利きたくないんだ、としくしく心が痛む
俺は悪い奴だ
ある種全てが家族のせいだというのも間違いではないんだと思う
孤児でさえ彼らが精神的な要なんだから
恵まれなかったとも恵まれていたともあまり考えない
近過ぎては見えないものもある、遠過ぎるということはない
ああ、ただ彼らにも愛を
人の望みの喜びよ
この世界に生きていて
幸せを望むことが出来る
この世界に生きていて
心から笑うことが出来る
この世界に生きていて
生きたいと本気で願える
もうそれだけで
俺はめいっぱい腹が膨れる
このでたらめな歌を分かってくれ
生きていこう
永遠じゃなくてもいい
君はとうとう俺の心からの願いが理解できない
そして俺は越冬地に集まる鳥のように仲間に出会う
営巣したり産卵したりはしないだろうけれども
死ぬ前に自分がどんな姿をしているのか知れて良かったと思う
生きる為に削ぎ落とした望みも願いも諦めとは違うものだ
またたく、記憶が光る、目印など何もない、ただ翼が風を捉える
行こう
何度でも海を越えて
君の所へ
コメント
言葉が繰り返す、言葉が繰り返して、言葉の意味を教えようとする、それらの言葉の押し寄せて、引き返す、そうした世界のかたすみに、いる。
この詩のまんまで、よいのではないでしょうか。人が生きるのは、人が人を想うのは、きっとそういうことなのだから。
君は違う世界にいるのかしらと想像します。何度でも越えられる海は半永久的に在ってくれるといいなと願います。
(私が知るかっこいいひとは自分も他人も大切にしているんですよ。それって最高ですよね。)
この詩の『俺』さんは全力で自分をしあわせに出来るといいなぁ。
全体の詩の緊張感がすばらしいです。
所々好きな言葉があって、それらがこころにグッと来ます。
たとえば、
俺は悪い奴だ
とか
このでたらめな歌を分かってくれ
生きていこう
永遠じゃなくてもいい
とか
行こう
何度でも海を越えて
君の所へ
が特に好き。
@坂本達雄
もし出すとしたら、なぜ詩集を出すのだろう、という素朴な疑問の答えの一つが、自分固有の言葉の使い方を辞書のように記せるから、でした。断片的で、物量が足りないので、これからも雑になっていくのを感じつつ少し多めに書くかもしれません。まとめたい。
@長谷川 忍
これ以外の正しい生き方が分かりません。他のことは何も考えなくていい気がする。間違っていると言われることすらありませんでしたが、心に従えという感じですね。有難うございます。
@たちばなまこと
我知らず優しい人を傷付けるのが怖くて、極力優しくない人と一緒にいるようにしていました。彼らは傷付けることになんのためらいもないので、こちらがうっかり振るった色んな暴力で傷付くということに慣れている気がして。今は、大切にするということが以前よりは出来ると思うので、そんな風に人は選ばないですね、多分。
幸せになる、自分を愛する、わりに簡単なことなので、作者が心がければそうなっていくと思います。有難うございます。
@こしごえ
典型的な青年像だ、という気がしています。
誰かの為に生きていきたい、その為になら犠牲になっても良い。
しかるべき強さを得て大人になってゆく。
弱っちい作者には出来ない生き方なので、ぜひとも誰かに実践していただきたい。
「俺」という言葉には、夢と憧れがあります。
有難うございます。