相合橋

 にこやかに前を歩く私の後ろから
 着いてきてくれる あなたの足取りは
 まるでデパートの屋上へ遊具目当てにやって来る幼児の父親

 やっぱり、ここからが一番綺麗なのよ!
 橋の中ほどで並び立つと自慢げに私がそう言って
 道頓堀川に架かる大黒橋の方を向く
 
 二人で すごす短い宵を照らす川面のシャンデリア
 漂いはじめた夜の香りに煙草くゆらせる あなたは
 短くなった一本おさめる携帯灰皿を上着の懐に蔵う
 そろそろ 行こうか
 何が食べたい?
 灯 を見つめたまま呟いた

 そうして この橋を一度ならず二度までも渡ってしまう

 あなたの声、手のぬくもりも
 再びは もどり来ぬと
 過ぎた冬の深さを歎いてもみた
 たとえ、離れていても あなたの住まう空の下

 別名 「縁切橋」と分かっていて渡る男女も
 いるかもしれないが、
 わたしたちはそうではなかった

投稿者

滋賀県

コメント

  1. いつも思うのだけれど、橋って、不思議な場所ですよね。

    今回の作品は、
    あえていうと抒情詩から橋を渡ろうとしている風景かな。

    会話の裏にある複雑な想いが伝わってくる甘酸っぱさと
    行動は同じ繰り返しなのに深まり変わりゆく心が前向き。
    明日のことは知らないけどどちらの方に進むのだろうか。
    今日は小満で双子座が始まりますが自称二重人格の私は
    休日くらいは心の中の姉さんと話し合って決めたいかな。
    このサイトの読者はこういうのを求めているのだろうか
    わたし自身、もっと、TPOを求めないといけないなぁ
    と(このサイトとかからも追い出されたくないので)と、
    思ったのかぜんぜん思ってないのか、けど、学べました。

    たくさん作品読ませてもらっています。ありがとうです。
    次もよろしく

  2. 戎橋(ひっかけ橋)とは違う相合橋を題材に何とも切なく素敵な物語ですね。会話が関西弁でないところもある種の異化効果とも感じられて良いなと思いました。この歳になると一周回ってなのか、恋愛もの、青春ものにキュンキュンしたくなるのです!

  3. @足立らどみ
      様へ

     お読みいただきまして、ご感想のコメントをお寄せくださり
    どうもありがとうございます!(^ ^)
     一度、橋を題材にして書いてみたいと以前から思っておりました。
    私の作品をたくさん読んでいただいて、本当にどうもありがとうございます!
    感謝致しております。
     これからもどうかよろしくお願い致します。m(_ _)m

  4. @あぶくも
      様へ

     お読みいただきまして、コメントをお寄せくださりどうもありがとうございます!
    ご感想のお言葉たいへん嬉しくて、感謝致しております。(笑)
     学生時代、宮本輝さんの川三部作を読んで道頓堀川を初めて見に行きました。
    夜に架かる橋を全部渡って、相合橋からの眺めが一番魅力的だと彼氏に話した
    ことがありました。
     いつもお読みくださって本当に有り難く思っております。(*^^*)
    私の詩は、恋愛ものが多いです。これからも恋に悩む女が登場してくるリリーの
    作品ですが、そうではない作品も含めてどうか今後もよろしくお願い致します。
    m(_ _)m

  5. 二人ですごす短い宵を照らす川面のシャンデリア、という表現が、特別な夜のようで素敵だなあと思いました。
    みんないろんな思いで橋を渡っているのだろうなと、詩を読みながら思いました。
    ふと、あの時、あんなことを考えながら渡ったなあと思い出す時があります。
    かつて一緒にいた人を懐かしく思い出しながら、最終連が否定形で終わっているのが印象的で、余韻の残る詩だなあと思いました。

  6. @ayami
      様へ

    お読みくださって、ご感想のコメントをお寄せいただきまして
    どうもありがとうございます!(*^^*)お言葉たいへん嬉しく
    思っております。
    思い出の橋、は…その人の心の中で永遠なのかもしれませんね。

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