竹林
自宅でお留守番するウサギは
あちこち破れたからだを丁寧に縫い繕われた
ぬいぐるみ
社員食堂で晩ご飯を済ませ帰宅する暗い空間
蛍光灯が点くとよろこぶウサギに
ただいま を言って腕時計はずし手を洗う
およそテレビドラマに登場するヒロインの暮らしとは、ほど遠く
片付かないままの部屋
まるで誰も知らない山深い竹林の様でもある
竹の葉は
枯れたと見える葉の表から
なんとは無しに油がにじみ出て
風に耐え
時の流れに耐えてきた
ある時は
そばせんべいと
渋茶があった夜
爪のネイルを除光液で落としながら
おもった
物言わぬ数々の暗い中に満ちるささやき
ああ、私が居なくとも
この空間をすりぬけ歩く私が
幾人かいるのではないだろうか?
寂しみ
など もう超越した不思議の林よ
竹の葉のさざめくと
ぴょん と跳ねて
近づく可愛い影が かくれんぼ
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