南の果の岬

 
 既に色褪せて重たく落ちている花片を
 踏みながら歩む林の中は
 もう黄昏ている
 
 椿林の木立
 わずかな隙間から
 聞こえる 波濤のどよめき

 腰をおろしてみなさい
 湿っぽい土の下から
 遠く渡って来た潮の
 たどりついた疲れのにおいがする
 だから
 椿があんなに
 木から落ちたとたんに色 褪せるのだ

 風の匂いをかいでごらんなさい
 南の果の風はどんなに
 なつかしいか
 それは疲れた嘆きの香がするからだ

 椿林の下の小径を一人歩いてみなさい

 鳴っている
 うごめく大気にすいこまれるような
 この生暖かい骨肉の確かな鼓動が、

 波
 風
 そして椿の林
 ここが四国の南端なのだ

投稿者

滋賀県

コメント

  1. 落ちた椿の花を踏みながら歩く情景は
    濃密な海風と相俟って
    とても肉感的で魅了されました。

  2. @nonya
      様へ

     お読みくださいまして、ご感想のお言葉をお寄せいただき
    たいへん嬉しく思います。どうもありがとうございます!(*^^*)
     この作品は、自分ではなく或る女性をモデルにして、最初
    「足摺岬」というタイトルで書きました。推敲重ねて今回、
    投稿してみたのですが、ちょっと自信のない作品でした。
     先に、お読みくださいました「時計」が、私の詩をネット
    公開始めました第一作目、になります。(^ ^)
     nonya 様の作品は、どれも!いつも、魅力的で楽しみに
    拝読させていただいております。
     いつも再読しては、コメントを入れるのが恥ずかしくなって。(^^;;
    何も言えず去ってゆく…リリーなのですぅ。♪

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