逃亡旗手

先天性虚言症集団の僕ら
「リズム・オブ・プランクトン」の最初で最後の仕事は
歴史上もっとも異質で芸術的な事件になってしまった
――しかし僕らが常々求めていたのは
   アートではなく単なる消費だった――

物語の始まりは
国家中枢機関「マッシュルーム11」の
複雑極まりない怪奇システムを
限りなく原始的な手段で切り抜いたことからである
使用したのは工作用のステンレス製ハサミ一本
数分で完遂できるほどの簡単な作業だった

動力源を失って完全に停止した街では
次々と変化が始まった
乱立するオフィス・ビルはプリン状に
電話ボックスがさらに電話ボックスを産み
アスファルトからは無数のヒマワリが増殖していく
壮観じゃないか
――僕らのリーダーでもあり預言者でもある「ミスターQP」は
   早速フィルムの入っていないカメラで撮影に入りだした――

もう時間切れだ
  もう時間切れだ

ここからは慎重に行動しなければならない
というのも騒ぎを嗅ぎつけた「妄想バタフライ」の連中が
金と権力にモノを言わせて
ありとあらゆるネットワークを遮断し
僕らを追跡してくるに違いないからだ

集合場所である「ピラミッド島」には
既に5千万ほどの民衆が待機していた
僕らがグライダーから飛び降りると歓声が上がったが
すぐに静寂に包まれた
誰もが恐れているのだ
誰もが

不安げに視線を注ぐ彼らには
何か意味のある言葉を投げかけなければならないのであろう
既にラジオのニュースでは
大規模な情報操作が行われているのだから
僕らのカリスマでもあり予言者でもある「ミスターQP」は
おもむろに拡声器を取り出して高らかに宣言した

さあ天国へ行くぞ

――いつもの嘘だとみんなは笑ったが
   まんざら嘘ではないらしい――

[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.001: Title by ヨケマキル]

投稿者

大阪府

コメント

  1. リズムオブプランクトン
    マッシュルーム11
    ピラミッド島
    ワクワクする、センスあるサイエンスフィクション感がたまりません!
    カッコいい

  2. 意味を置いてけぼりのスピードが良いです

  3. 所々、断片的に現代社会を彷彿させます。状況描写に臨場感がありますね。

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